新型肺炎の流行を受けて、罹患しているか否かの検査を受けたい人が増えている。しかし、感染者との濃厚接触者や重症者以外は検査を受けるべきではない。検査を受けるメリットよりもリスクの方が大きいからだ。(塚崎公義)
新型肺炎の検査を受けたい人は多い
新型コロナウイルス(新型肺炎)は、罹患していても無症状の場合があり、「自分も罹患しているのではないか」と誰もが不安になってもおかしくない。自分が罹患していれば、今後、重症化して死亡する可能性もあるし、周囲に感染させてしまうリスクもある。罹患しているか否かを知りたいと考えるのは自然なことだ。
しかし、「だから検査を受ける」という行為が合理的であるとは限らない。むしろ今回の場合には、政府が言うように「重症者等だけが検査を受ける」方が合理的だろう。
小さな確率が大きく感じられているだけかも
検査を受けたい人のうちで、実際に罹患している人はどれくらいいるのだろうか。判明している罹患者は数百人(3月9日時点)であるが、検査を受けていない罹患者も多いだろうから、想像するしかない。特に根拠はないが、仮に日本ですでに罹患している人が1万人とすると、およそ人口の1万人に1人の割合である。
そうならば、自分が1万人に1人の不幸な人間であるか否かを確認するために時間と金を使って検査を受けることが合理的とは考えにくい。人間は、非常に小さな確率は実際より大きく感じるものであるから、不安に思う気持ちは分かるが、それは合理的とは言い難い。「飛行機を怖がって乗らない」のと似たようなものである。
しかし、それ以上に重要な理由が2つある。1つは病院の待合室ほど罹患しやすい危険な場所はないこと。病院の待合室には実際に罹患した人が存在している確率が高いし、密閉された空間の中に比較的人間が密集している。わざわざそんな危険な所で何時間も待たされる必要はない。
もう1つの、さらに重要な理由は、検査を受けても真実が分かるとは限らないことだ。