建設コンサルは
全従業員の出社禁止も

 一部の工事現場で感染者も出ているが、「土木工事は密閉空間ではないところが多いから大丈夫」(ゼネコン関係者)と、全国の工事現場はその大半が中止になることはなかった。

 3月は発注者側の年度末の予算消化のタイミングであり、一年で最も仕事が集中する時期だ。

 受注したゼネコンにすれば、工事を中断してしまうと、確保していた下請けの職人たちが他の工事に流れていってしまう。すると、工事を再開しようにも人手が確保できなくなる恐れがある。

 職人としても、できるだけ休みたくないのが大勢の本音だ。

 日当制の給与体系が残る建設業界では、予定した仕事がなくなるとすぐに収入減に直結する。中小建設業者も年度内を予定していた完工時期がずれて3月に売り上げが計上できなくなるのは、経営への打撃となる。

 国は、自治体にも国の措置を参考にするよう通知したが、財政の苦しい自治体が増加分を負担してくれるかどうかは怪しい。工事畑は、大局的な感染への対応よりも、目の前の仕事が進まないことへの危機感が先に立っているのだ。

 各業界で一斉に広がっている「テレワーク」なぞ、工事の現場に立って初めて金が生まれる職人にとっては、別の世界の話だ。予定していた現場が一時中止となったところで、自宅待機では食っていけない。中断の話が上がらない民間工事なり、別現場を引き受けるだけだ。

 対して、工事前の調査や設計、測量などを受注する業務畑の建設コンサルタント業界は、大手を中心に一時中止や工期延長を申し出ることにちゅうちょがなかった。今回の措置を活用しながら、大手は3月15日まで軒並みテレワークを実施。全従業員を対象に出社を原則禁止にするところもあった。

 彼ら業務畑は、期末の3月は現場作業などを終えて会議や報告書作成の取りまとめなどの案件が多く、それらは関係者によるウェブ会議や在宅勤務でのデスク業務でこなせるものが多い。

 工事現場ほど下請けの奪い合いが起きる環境下ではなく、売り上げが立つ時期がずれることを受け入れられれば、延長措置を判断しやすかったのである。

 工事畑と業務畑のどちらも現場作業を中心としたブルーカラーの仕事、デスクワークを中心としたホワイトカラーの仕事を併せ持つが、3月期末のタイミングで工事畑はブルーカラーの論理で、業務畑はホワイトカラーの論理で一時中止等の判断が下されたと受け止められる。

 この差は建設業界に限らない日本の労働構造を映したものともいえるだろう。