新型コロナウイルスの米中共同研究がハーバード主導で始動
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との戦いに、米ハーバード大学と中国の研究者らがタッグを組んで挑むことが分かった。この共同研究グループが取り組むのは、感染予防のためのワクチンおよび治療用の抗ウイルス薬の開発だ。さらに、包括的なアプローチによって、新型コロナウイルスの基礎生物学的な解明や制御方法を見つけたいとしている。
研究グループの一人で米ハーバードT. H. チャン公衆衛生大学院のMarc Lipsitch氏は、「臨床試験をデザインするにあたっては、重篤な状態に陥る可能性が最も高い人の特徴を明らかにする必要がある。また、ワクチンの臨床試験をデザインし、流行地域や感染規模の大きさを予測するには、COVID-19の感染の広がり方についても解明しなくてはならない」と説明している。
このCOVID-19に関する研究は、ハーバード大学と広州市呼吸器疾病研究所(中国)との5年にわたる共同研究プロジェクトの一環として実施される。研究資金として、中国恒大集団(China Evergrande Group)が1億1500万ドル(約120億7500万円)を助成する。予定されている主な研究テーマは以下の通り。
・新型コロナウイルスに対する体の免疫システムの反応の仕方を解明
・感染予防のためのワクチンおよび感染者の症状軽減のための抗ウイルス薬の開発
・重篤なCOVID-19患者に対するより有効な治療法の開発
・より迅速かつ正確な診断を可能にする検査法の開発
Lipsitch氏は「診断技術は、感染者数を把握し、感染の有無を見極める上で欠かせない。優れた診断法がなければ疫学調査の実施は不可能だ」と強調している。
米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のAnthony Fauci氏によると、COVID-19のワクチン開発は、ウイルスの遺伝子配列の決定から臨床試験まで、過去最短の期間で進行している。それでも、安全性の検証に3カ月、有効性の検証にさらに6~8カ月を要し、実際に使えるようになるまでにあと1年から1年半かかるという。