「500km先」ではなく「京都へ行きたい」

 昭和の時代は「500km先に行こうぜ!」と会社が煽ったら、皆が「500km先」という言葉自体にロマンや意味を見出せた。先には何があるんだろうと、ワクワクできた無邪気な時代だった。

 しかし今は「500km先に行こうぜ!」だけでは、誰もワクワクしない。「は? なんでそんなことしないといけないんですか?」と言われる。量的指標である距離だけを提示して「すごそうだよ!」と掲げても、誰も乗ってくれないし、燃えない。

 企業が言わなければいけないのは、500kmという数字ではなく、具体的な目的地だ。我々は、どこへ行きたいのか。

 東京から西へ500km先は、京都だ。「京都へ行こう」だったら、具体的なイメージが湧いてくる。おいしい食べものも、歴史的な遺産や文化財も、たくさんある。京都滞在のイメージがムクムク湧いてくる。

 すると、そのためにどうすればいいか、行動に移せる。新幹線のチケットを買い、宿を手配する。しかも、そのプロセスでちゃんと議論ができる。一番早く行けるのは新幹線なのか、飛行機なのか。安くあげるなら深夜バスだ。駅前の宿ならアクセスはいいが風情がない。風情重視だと交通の便が悪い、さてどうする?

 そもそも「京都なんか興味がない、おれは北海道に行きたいんだ」という人は、もうそこで来る必要はない。北海道を目指す乗り物に乗ればいい。そうなれば、会社と社員の不幸なミスマッチもなくなるだろう。

 すべての会社は、自分たちの目的地を、自分たちの言葉で示すべきだ。

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