1万人を超えるリーダーは、「同じこと」に悩んでいた。
本連載は、1万人を超えるリーダーから寄せられた「悩み」に対し、明確な答えを提示するものだ。
書き手は、日本最高峰のビジネススクール「経営アカデミー」で19年以上の登壇実績を誇り、経営者や企業幹部を指導してきた浅井浩一氏。全国で年間100回以上の研修や講演を行い、コンサルタントとしても現場に入り込む。
「離職率を抑え、メンタルを病む人をゼロにし、なおかつ目標を達成し続ける」ために、リーダーとともに考え、行動し、悩みの解決を図る。業種・業態を問わず、職場再建率は100%。これまで指導してきたリーダーの数は1万人を超える。発売即4刷のベストセラー『1万人のリーダーが悩んでいること』の著者でもある。

「私は間違ってません!」と言い張る部下を動かすコツPhoto: Adobe Stock

【悩み】部下を指導するとき、「ここが間違っている」と否定しがちです。「否定しない」コツはありますか?

 「指導」とは「部下が現在行っていることを修正し、正しい方向へ導く」ことですから、「部下を否定する」という事実からは逃れられません。身につけるべきは「相手を否定しないコツ」ではなく、「的確に否定するコツ」です。

 そして、「的確に否定するコツ」は「事実ベース」で伝えることです。

「お前はダメだ」ではなく、「相手に一生懸命提案をしているのはわかるんだけど、横で聞いていると君の提案は自社の都合ばかりを話している。相手のオーナーのニーズをまったく聞けていない。まずは相手のニーズを聞いて、それに合わせて提案してみよう」というように、具体的に「事実」を示し、修正を求めるのです。

 部下自身も、自分のやっていることについて「どのような理由でうまくいっていないのか」がわかれば、行動を改めやすくなります。

 部下の行為が明らかに間違っている場合は、訂正しやすいでしょう。しかし仕事は複雑なもの。部下の言い分に一理あることも多いのです。

「自分は間違っていない」と主張する部下

 ある製薬メーカーでは、他社との競合優位性を確保するために、「月300万円以上の売上があるドラッグストアには、月8回訪問しなさい」というルールがありました。多くの部下はこのルールを守っていましたが、ある部下は月に4回しか訪問していません。

 ここで「お前はなぜ4回しか訪問していないんだ! もっと訪問しろ」と頭ごなしに叱っては、部下は心を閉ざしてしまいます。まずは「なぜ月4回しか訪問していないんだ?」と、「事実」を確認します。すると部下は、次のように答えました。