潜入!グーグル経営道場#6Photo by Hiroyuki Oya

似顔絵を描く、紙をちぎってゾウを作る……。経営道場で講習の合間に行われるのは、息抜きのような「儀式」だ。だがここには、人間関係を円滑にし、強いチームを構築するためのグーグルのノウハウと知恵が詰まっている。特集『潜入!グーグル経営道場』(全6回)の最終回では、グーグルが実施する儀式の記者の体験談をレポートする。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)

価値と意味を持つ慣習行為は「儀式」
組織文化づくりの手助けになる

 目標管理術「OKR」の講座の前に、トランプ51枚から足りない1枚を探す。リーダー養成講座の前に、ペアを組んで相手の似顔絵を描く。手を体の後ろに回し、紙をちぎってゾウの形を作る……。

 グーグルの経営道場では、まるで息抜きのような遊びをする時間が設けられている。グーグルではこうした活動を「儀式」と名付けている。

「ささいなことでも、価値と意味を持つ具体的な慣習行為をわれわれは儀式と呼んでいます。グーグルではチームミーティングをする際に、自身の見直し、新しい人間関係のきっかけづくりのために儀式をします。儀式は組織文化をつくる手助けになる」

 こう語るのは、グーグルの新人研修などを担当するチーフ・イノベーション・エバンジェリストで、米スタンフォード大学の非常勤教授も兼務するフレデリック・プフェールト氏だ。

 例えばグーグルの新入社員は、中途採用のベテランであっても、プロペラ付きのカラフルな帽子を1週間身に着けるという儀式がある。この帽子をかぶっている人は、誰にどんな質問をしてもOK。周囲から新入社員だと一目で分かり、社員は帽子をかぶっている人を見つけると積極的に話し掛けにいく。これで新入社員はグーグルに入社したという意識が高まり、周囲に溶け込みやすくなるという。

 この他にも、チームミーティングの後にはサンキューメールを出し、「リスクを取った」「プロジェクトに貢献した」などと個々のメンバーに感謝をする儀式がある。プフェールト氏によれば、このメールの効果を調べたところ、実はメールを受け取った人よりも、出した人の方が幸福になるという結果になった。そして、感謝のメールを皆が積極的に出す文化につながっていったという。

 イノベーションを生むチームづくりのための儀式もある。記者は米シリコンバレーで開催された、「イノベーション文化」と題したグーグルの新入社員向け研修の一部を体験することができた。