『利己的な遺伝子』のリチャード・ドーキンス、
『時間は存在しない』のカルロ・ロヴェッリ、
『ワープする宇宙』のリサ・ランドール、
『EQ』のダニエル・ゴールマン、
『<インターネット>の次に来るもの』のケヴィン・ケリー、
『ブロックチェーン・レボリューション』のドン・タプスコット、
ノーベル経済学賞受賞のダニエル・カーネマン、リチャード・セイラー……。

そんな錚々たる研究者・思想家が、読むだけで頭がよくなるような本を書いてくれたら、どんなにいいか。

新刊『天才科学者はこう考える 読むだけで頭がよくなる151の視点』は、まさにそんな夢のような本だ。一流の研究者・思想家しか入会が許されないオンラインサロン「エッジ」の会員151人が「認知能力が上がる科学的概念」というテーマで執筆したエッセイを一冊に詰め込んだ。進化論、素粒子物理学、情報科学、心理学、行動経済学といったあらゆる分野の英知がつまった最高の知的興奮の書に仕上がっている。本書の刊行を記念して、一部を特別に無料で公開する。

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著者 ジェイ・ローゼン
ニューヨーク大学ジャーナリズム学科教授。著書に『ジャーナリストは何のためにいるのか(What Are Journalists For?)』

どの枠にはめるかで
解決策が変わる「厄介な問題」とは

 ニューヨーク市に住んだことがある人なら、頭を悩ませたことがあるに違いない問題がひとつある。夕方4時から5時にかけて、なぜかタクシーが捕まらない。

 この理由は謎でもなんでもなく、需要がピークの時間帯に、タクシー運転手のシフト交代が多いからだ。1台のタクシーを24時間2人で動かすとなると、午後5時で交代するのが妥当なため、多くのタクシーがいっせいにクイーンズ地区にある車庫に向かう。

 今やこれはニューヨーク市タクシー&リムジン協会が抱える問題のひとつであり、解決が困難な問題と呼んでもいいかもしれないが、「厄介な問題」ではない。何しろ、今述べたように簡単に説明ができる。それだけでもう、「厄介」というカテゴリーには入らない。

 「厄介な問題」という言葉は、一部の社会科学者のあいだで使われている専門用語だ。とはいえ、厄介な問題とはどういうものかを理解し、通常の(「単純な」と呼んでもいい)問題との見分け方を知っておくことは、私たちにとっても非常に有意義だろう。

 厄介な問題には、何が問題かをうまく説明できないという特徴がある。はっきりと定義することや、その終わりや始まりを明言できない。問題の見方の「正解」というものが存在せず、明確な公式もない。どう枠にはめるかで、解決策になりそうなことが変わってしまう。「問題は、別の問題があるという兆候でしかない」との言葉はどんなときでも成立し、そう言っておけば間違いにはならない。