ジョン・ブロックマン
第15回
イタリアに旅行をした人は身振り手振りが大げさになる
脳の中には、それぞれに機能が異なっている「自分」が多数存在する。 友人と仲良くすることを担当する自分、自分の身を守る(悪い人間から自分の身を守る)ことを担当する自分。地位を獲得することを担当する自分や、友人を見つけることを担当する自分も存在している(読者のなかには、この種の自分がときにさまざまな問題を生んでしまうのを体験した人もいるだろう)。また、子供が生まれれば、その世話をする自分も生まれてくる。

第14回
科学的思考のエッセンスは「実験」につまっている
実験は科学者だけのものではなく、実際には誰もが絶えずしている。乳児でさえ、色々なものを口に入れて美味しいかどうかを確かめる。これも立派な実験だ。少し大きい幼児も実験をする。色々な行動をしてみて、自分がうまくできるのはどれか、できないのは何かを確かめるのだ。

第13回
「利害関係者が多数いる前例のない問題」をどう解くか
「厄介な問題」という言葉は、一部の社会科学者のあいだで使われている専門用語だ。とはいえ、厄介な問題とはどういうものかを理解し、通常の(「単純な」と呼んでもいい)問題との見分け方を知っておくことは、私たちにとっても非常に有意義だろう。厄介な問題には、何が問題かをうまく説明できないという特徴がある。はっきりと定義することや、その終わりや始まりを明言できない。問題の見方の「正解」というものが存在せず、明確な公式もない。どう枠にはめるかで、解決策になりそうなことが変わってしまう。

第12回
平均値をとっても多くの場合で意味がない
人口のわずか1%が、すべての富の35%を握っている、ツイッターではトップ2%のユーザーが全ツイートの60%を書いている、など。医療保険では、最も費用がかかる5分の1の患者に、全体の5分の4の医療費が使われているという話もある。この種の話題は大変な驚きというニュアンスでよく語られる。本来あるべき姿から外れていると言いたいのだろう。

第11回
制約があると創造性が上がる
斬新な料理が生まれるのは、使える材料が限られているときが多い。使いたいが手に入らない材料があれば、その代わりになるものを考えざるを得ない。そのおかげで今までになかった発想が浮かぶ。

第10回
アップルのロゴを見ると人は創造的な思考をする
日常的なごく普通の活動をしているときでも、脳内では、多数の情報処理が並行して行われているが、そのほとんどは意識にのぼらない。この無意識下で処理されている情報は、私たちの思考や感情、行動に微妙な影響を与える。

第9回
私たちの誰もが世界を正しく知覚できない
どの生物も、環境に存在する情報のごく一部だけを受け取っている。つまり世界の断片だけをとらえているのだ。その断片が「環世界」である。とらえられない部分も含めての世界全体がどういうものかは誰にもわからない。ただし、個々の生物はおそらく、環世界が世界のすべてだと信じて生きている。この世界は当然、私たちの感じている環世界よりも広いのに、通常、それを意識しない。

第8回
人は感情を動かされると確率を見誤る
出来事の確率を見積もるのが苦手な人は多い。数字、計算に弱いというのも理由かもしれないが、それだけではない。そもそも直感のレベルで、確率を誤って見積もってしまう人が少なくないのだ。

第7回
「確信のない結論」のほうが信頼できる
優れた科学者は決して何かを「確信」したりはしない。むしろ、確信を持たない人間の出した結論のほうが、確信を持っている人間の結論よりも信頼できる。

第6回
クモに噛まれて死ぬ人は1億人に1人もいない――確率計算能力の上げ方
クモを見たとき、私たちはどういう気持ちになるだろうか。恐怖心を抱く人は多いのではないか。恐れの程度は人によって違うが、だいたいの人は怖いと思うに違いない。しかし、考えてみてほしい。クモに噛まれて人が死ぬ確率はどのくらいだろうか。クモに噛まれて死ぬ人は平均して年に4人未満である。つまり1億人にひとりもいないということだ。

第5回
「自分は平均以上のドライバーだ」と90%の人が考えている
人間は成功を自分のおかげだと思いたがる一方で、失敗は自分のせいだとは思いたがらない。良い行いは自分のものだと進んで認めても、悪い行いは自分のものだと認めない。人間は普通、自分自身のことは高く評価する。自分をよく思えるのは楽しいことだが、危険も多い。社会心理学では、これを「自己奉仕バイアス」と呼んでいる。

第4回
「安心を得る」ことが安全対策の目的になっている
現代社会は安全対策に大枚をはたいているが、その真意は、リスクを減らすためではなく安心を得るためにある。私のようにセキュリティ工学に携わる人間の間では、そうした対策を「セキュリティ劇場」と呼んでいる。

第3回
大量の情報の中から「ノイズ」を排除する方法
「信号検出理論」が頭に入っていれば、「今週昇進するのは射手座の人である」といった意見の質を分析することができる。

第2回
金持ちになっても思ったほど幸せになれないのはなぜ?ダニエル・カーネマンの回答
一流の研究者・思想家しか入会が許されないオンラインサロン「エッジ」の会員151人が「認知能力が上がる科学的概念」というテーマで執筆したエッセイが一冊に。進化論、素粒子物理学、情報科学、心理学、行動経済学といったあらゆる分野の英知がつまった最高の知的興奮の書。

第1回
資金力が豊富な「反科学陣営」とどう戦えばよいか
『利己的な遺伝子』のリチャード・ドーキンス、『時間は存在しない』のカルロ・ロヴェッリ、『ワープする宇宙』のリサ・ランドール……。そんな錚々たる研究者・思想家が、読むだけで頭がよくなるような本を書いてくれたら、どんなにいいか。実は、3月11日に発売される新刊『天才科学者はこう考える 読むだけで頭がよくなる151の視点』は、まさにそんな夢のような本だ。本書は、一流の研究者・思想家しか入会が許されないオンラインサロン「エッジ」の会員151人が「認知能力が上がる科学的概念」というテーマ執筆したエッセイを一冊にまとめたもの。本書の刊行を記念して、一部を特別に無料で公開する。
