2つの“財布”を使い分け
支払いを先延ばしに

「NIPPON PAY」の決済用タブレット端末「NIPPON PAY」の決済用タブレット端末。QRコードを読み取り決済サービスになっている Photo by R.S.

 トラブルの“元凶”となったNP社は、決済用タブレットの運営会社。アマゾンのほか、NTTドコモなどの決済サービスを手がける企業とシステム連携を担っている。

 一方、決済用タブレットを無料レンタルする事業を手がけるのが、19年11月までNP社の子会社だったNIPPON Tablet(以下、NT社)だ。この2社をめぐる入り組んだ関係が、金銭トラブルを引き起こしている。

 今回、トラブルに巻き込まれて被害に遭った当事者は、大きく3パターン。(1)決済用タブレット端末の販売代理店、(2)決済用タブレット端末の「端末オーナー」、(3)決済用タブレット端末の契約店──という3つの立場の人々だ。

 いずれの当事者に対しても、現在NP社からの支払いが大幅に遅延している。また、NP社、NT社ともに信用不安を抱えているとみられる。まず、それぞれの当事者ごとのトラブルを説明しよう。

(1)販売代理店

 NP社は決済用タブレットを全国各地の店舗に普及させるため、販売代理店を活用。利用する代理店を「パートナー」と呼んだ。NTT マーケティングアクト(NTT西日本グループ)、USEN NETWORKS(USEN-NEXT HOLDINGSグループ)などの名の知れた企業から、零細・個人事業主まで幅広く100社ほどあるようだ。

 NP社のタブレットの契約を1台獲得するたびに、1万5000円のリベートがパートナーに支払われる──。この条件で、各代理店はNP社ではなく「NT社」と契約していたという。

 ところが19年11月末、リベートの支払いが滞る。そして同12月初旬、NP社代表取締役の高木氏から代理店にメールが届いた。そこには、パートナー企業に不適切な営業活用があり、経営改善のため高木氏はNP社取締役を辞任し、NT社を自ら買い取って代表取締役になることが記されていた。

 さらに12月27日、高木氏から、希望者する代理店とは個別に面談するというメールが届く。面談の場で高木氏は“任意組合”への加入を勧め、「任意組合への出資で、組合を通してニッポンプラットフォーム社の株式を保有することと同様の経済的価値を享受できる」と主張したという。

「踏み倒されたリベートの総額は数百万円。カネを払わず、任意組合への加入を勧めたことも納得がいかない。抗議メールを送っても、返信がない」とある代理店は怒り心頭だ。

 小規模な代理店でも、3カ月に一度振り込まれるリベート額が100万円を超えることは珍しくないという。「最大手の代理店になると、未払い額は6000万円程度になるのではないか」(関係者)。100社を超すパートナーへの未払い総額は数十億円規模に達する可能性があると、前出の関係者はみる。

(2)端末オーナー

 NP社は企業の経営者を相手に、「決済用タブレットの“オーナー”にならないか」と17年末ごろから勧誘していた。店舗に貸し出す端末のオーナーになることで、加盟店から得る決済手数料の粗利益のうち、最大45%を獲得できるとアピール。オーナーになれる端末は、限定5万台(後に10万台に拡大)。端末の購入資金が「経理上損金算入できるため、節税になる」といううたい文句だった。

 オーナーは自分の法人と「NT社」との間に売買契約及び運用委託契約を結び、購入代金に応じてインセンティブ料率を掛け合わせた「端末賃料」を購入の1年後に受け取るという仕組みだ。当初の5万台には、年15%のインセンティブが保証されていたという。

 ところが代理店にメールが送られたのと同じ19年12月27日、高木氏の個人名義で、“私的な”手紙が端末オーナー宛てに送られてきた。

 手紙で、高木氏はNP社を退任してNT社の株を買い取って代表取締役に就き、今後NT社を整理する方針を説明。「端末賃料の権利とリスクを引き取らせてください」「今後、端末賃料がお支払いされない状況になる未来を知っている」などとつづられている。

 端末オーナーの債権額について、あるオーナーは「(NP社から)全体で28億円程度と聞いた」と語る。

(3)端末契約した店舗

 NP社と契約を結び、客のQR決済に端末を利用していた店舗でも、最近になって金銭トラブルが発生している。

 ある加盟店によれば、NP社からの支払いが遅延し始めたのは20年3月になってから。NP社の社長名義で、3月15日の支払期日を同31日に遅延するという内容のメールが届いたという。そこに追い打ちをかけるように、Amazon Payが使用できなくなったというメールや、支払いを4月15日にさらに延期してほしいというメールが届いたという。

「向こうからメールは来ますが、私たちからの質問には返信がありません」と加盟店の経営者は戸惑いを隠さない。

 NP社は、決済用タブレット端末の利用は無料だという触れ込みで、19年9月末の時点で全国の小規模事業者向けに9万5000台を配布している。

 例えば、最も取引額の多いドコモの「d払い」で、利用客がタブレット端末を使って決済した場合は、まずドコモが利用手数料を差し引いた額をNP社に入金。NP社はさらに手数料を差し引いて、各店舗に料金を支払うことになる。

 現在支払いが滞っているのは、NP社から店舗への支払いの部分だ。

 飲食店を営むある店舗オーナーは、未払い額を「26万円程度」と話す。1店舗ごとの売り上げは小さいとはいえ、仮に契約店舗の3割で20万円の未払いが起きているとしたら、単純計算で総額は約60億円に上る。

 販売代理店や端末オーナーと違い、店舗加盟店は「NP社」と契約している。NT社の時に使った「営業トラブル」を支払い遅延の理由とすることはできない。

 なお、ドコモは、NP社とNT社の関係や、それぞれの支払い遅延については認識していなかった。

 NIPPON PAYという決済サービスをめぐって、契約関係をわざわざ複雑化していることが見て取れる。どんな意図があるのか。