リスクが想定の波を超えてやってくる
暖冬や消費増税に続き、新型コロナウイルスへの危機感が追い打ちをかけ、企業業績に与える影響は計り知れない。市況悪化から経済全体が足踏み状態を余儀なくされ、もともと体力が脆弱な中小事業者を中心に、倒産・廃業を迎える企業は増えてくるだろう。
実際に3月10日には、国内旅行業を手掛けていた(株)愛トラベル(広島市、負債約3億円)が破産を申請している。自社企画した中国・四国エリアの観光名所を巡る日帰りバスツアーを主体に事業を展開。広島市と福山市の2拠点で積極的な格安プランで営業活動を行い、2007年5月期には売上高13億円を超えていた。
しかし、近年は同業者との価格競争の激化や節約志向の高まりなどから、年売上高10億円を下回る状況が続いていた。また、2018年夏に発生した西日本豪雨災害の影響を受けて売り上げが大きく減少し、採算性も悪化。このため、割安感のあるツアーを企画して立て直しを図っていたが業況は改善せず、ここに来て新型コロナウイルスの影響で予定していたツアーの中止が相次いだため、事業を停止している。
天候不順と新型コロナウイルス。ダブルパンチの影響を受けた同社だが、こうした各種リスクを前提とした事業全体の組み直しや対応策が企業に求められている。一方で、帝国データバンクの調査(昨年6月発表)では、自然災害リスクへの対応策として、「事業継続計画(BCP)を策定している企業」は全体のわずか15.0%にすぎない。BCP策定や金融機関への相談など、企業にとって緊急時にどう動くべきか、リスクに対して備えておくことがこれまで以上に重要となり、各種リスクが想定の波を超えてやってくることを改めて念頭に置いておきたい。
(帝国データバンク 東京支社 情報部)