親の感情コントロールが
子育てに大事な理由

 ただ、ここで翻って考えてみよう。へこたれない子を育てる上で、親が子どもに与える影響はないのか?

 身近な人物や憧れる人物の口癖やしぐさ、あるいは生き方を自然にまねするようになることをモデリングというが、親は子どもにとって最も身近なモデリングの対象なのである。

 実際、子育てをしていると、教えたわけでもないのに子どもが自分のちょっとした癖を取り入れているのに気づくことがあるはずだ。

 親自身は自覚していないことが多いが、子どもは自然と親に似てくるものである。

 感情コントロール力が乏しく、すぐに感情を爆発させる子どもの家庭には、すぐに怒りだす親がいたりする。やはり感情コントロール力が乏しく、落ち込みやすい子どもの家庭には、何かにつけて悲観的な親がいたりする。

 また、対人不安が強く、人づきあいが苦手な子どもの家庭には、人間関係に消極的な親がいたりする。人の気持ちに鈍感で、場違いな言動が目立つ子どもの家庭には、人の気持ちに対する共感性が乏しい親がいたりする。

 一方、粘り強く、頑張り屋の子どもの家庭には、やはり頑張る姿勢をもつ親がいるものである。どんなに困難な状況でも諦めずに頑張り続ける子どもの家庭には、レジリエンス(困難に直面して落ち込むことがあってもすぐに立ち直る力)の高い親がいるものである。

 もちろん「親ですべてが決まる」というわけではなく、他にもさまざまな要因があるが、親の要因が強力であることを踏まえて、親自身のEQ(心の知能指数)を高めることが大切である。

 そこで、まずは自己モニタリングを意識してみることを勧めたい。自己モニタリングとは、相手や周囲の反応を見ながら自分の言動の適切さを判断し、自分の言動を調整することである。

 相手がムッとした感じなのに気づかない人がいる。相手を傷つけるようなことを平気で口にする人がいる。周囲の人たちがうんざりしているのに気づかずにしゃべり続ける人がいる。そのように相手や周囲の反応に無頓着な人は、自己モニタリングができていないのだ。

 相手や周囲の反応にあまり意識が向かわず、自己モニタリングがうまく機能しないと、場違いな言動や不適切な言動が多くなり、あきれられたり、信頼を失ったりすることになりやすい。

 親自身が自分の自己モニタリングの傾向をチェックしてみて、うまく機能していないようなら、そこを改善するように心がける必要がある。

 そうしなければ、モデリング効果によって、子どもにも親と同じ傾向が見られる可能性が高くなる。そればかりではなく、自己モニタリングがうまく機能しない親は子どもの反応に鈍感になり、適切な対応を怠ることにもなりやすい。