価値判断の基準となっている
それぞれの関心を把握する
まず、冒頭に挙げた休業要請をめぐる都と国の対立について、報道からそれぞれの「関心」を確認してみましょう。「新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言を巡り、西村康稔経済再生担当相が対象地域となった7都府県知事とのテレビ会議で、休業要請を2週間程度見送るよう打診したことが8日、関係者への取材で分かった。」(4/8(水)22:20配信 共同通信)
「その上で『基本的な対処方針の中に、外出の自粛の効果を見定めてからといった文言があった。2週間と言われている』と、国が外出自粛の見定めの期間を2週間としていると説明。「東京にとって2週間という確認の時間は、ちょっときつい。スピード感を持って対処しなければいけない。速い方に歩調を合わせていきたい」と、感染拡大に歯止めが利かない東京都は、2週間も見定めていられないと苦言を呈した。」(4/8(水) 22:04配信 日刊スポーツ)
こうしたことから、西村さんは経済再生担当ということもあり、命よりも経済に関心があるようにみえます。コロナ災害という有事対応のトップに「経済再生担当大臣」を就けた国の最重要関心もまた、国民の命ではなく、経済にあることが透けて見えます。
これに対して小池都知事は、「東京にとって2週間という確認の時間は、ちょっときつい。スピード感を持って対処しなければいけない。速い方に歩調を合わせていきたい」と、都民の命を守ることを最上位に位置づけています。
つまり、小池都知事と西村担当相の関心にはズレがあります。このように目的や関心がズレていると意思決定は停滞します。
人間は関心や目的に応じて価値を判断します(価値の原理)。そのため価値判断の起点となる関心が異なる場合、同じ施策(方法)に対して、背反する価値を見いだすことになるのです。
関心や目的のズレが生じたら
「関心の妥当性」を問う
では、この新型コロナウイルスに対峙する行政のミッションは何なのでしょうか?何を最重要関心とすべきなのでしょうか?
国民の命を守ることでしょうか?目の前の経済活動を維持することでしょうか?
関心や目的のズレによる信念対立が起きている場合には、関心(目的)の妥当性を問うことが有効です。
私が代表を務めるエッセンシャル・マネジメント・スクールの副学長を務めていただいている本間正人氏(京都芸術大学副学長)は、非常事態宣言ではなく、「命ファースト宣言」と言うべきであり、「みんなが生きていれば、経済は回復させられますが、逆はあり得ません」と指摘しています。