これは今、国が、そして私たち一人ひとりが最も大事にすべきことは何かを言い当てているという点で、極めて本質的な言明だと思われます。

 当たり前かもしれませんが、当たり前のところがズレていると信念対立に陥り、クライシスマネジメントとしては致命傷となる意思決定の停滞を招くことになるのです。

 政府、地方行政は言うに及ばず、私たち一人ひとりも、あらためて今何を一番大切にすべきかを明確にしておくことが必要です。

 それこそが、マネジメントする上で、意思決定する上で、そして方法を考える上で起点となるのです。

「休業要請の2週間保留」は
危機の本質を理解できていない

 次に、正しく「状況」を把握する、つまり今回の新型コロナウイルスという危機の本質を見極めることです。この現象の認識がズレていると意思決定の信念対立に陥ります。

 感染爆発は津波のように突然襲ってきます。先進諸外国すらこの感染爆発の津波にのみこまれてしまい、「助かったはずの命」まで次々に失われています。

 これはSFでも映画でもありません。諸外国で「すでに起きた未来」です。日本で「これから起こるであろう現実」です。
 
 だからこそ、多くの専門家や市民たちが、日本も緊急事態宣言を一日でも早く出すべきだと訴えてきたわけです。しかし、ようやく発令されたのは4月7日。

 もちろんやらないよりはよかったですが、すでにクライシスマネジメントの最大の敵ともいえる「意思決定の停滞」が起きており、この時点で遅きに失している可能性もあるにもかかわらず、この「政府からの休業要請の2週間保留」の報道です。

 緊急事態宣言をしても、2週間程度外出の自粛の効果を見定めてから休業要請をするというのは、非常事態宣言を骨抜きにするものです。どうも国は、この新型コロナ対策の危機の本質を理解できているようには思えません。