今できる5つの財務戦略

 では、もともと財務状態が悪い企業はどうすれば良いのでしょうか?

1.ムダな資産を処分

 まずはゴルフ会員権や遊休不動産など無駄な資産を処分するべきです。今のタイミングでは安いかもしれませんが、資金ショートするよりマシです。

2.ムダな保険を解約

 保険積立金があれば、生命保険会社も金利0%の利息で融資をおこなってくれています。ただし無駄な保険であれば解約してしまうべきです。保険料という今後のキャッシュアウトを減らせますし、解約返戻金があれば手元の現預金を厚くできます。

3.金融機関へのリスケジュールの相談

 当然、金融機関に相談すべきです。日本政策金融公庫と保証協会の制度が使えないか、諦めずに掛け合いましょう。こういった事態ですから、状況によっては、現在リスケジュールをしている企業にも融資してくれる金融機関もあります。

 もし、どこからも調達ができないのであれば、税金・社会保険料の猶予をお願いしましょう。
それでも厳しければ、金融機関に返済を待ってもらうようお願いするしかありません。

 新規の融資が出ないようであれば止めて生き延びるしかありません。

4.手元の現預金を減らさない

 テレワーク助成金・雇用調整助成金など国が様々な施策を打ち出してくれて助かる会社も多いと思いますが、助成金・補助金関係はどうしてもキャッシュインのサイトが遅いので、準備・手配はしながらも手元の現預金を減らさないために、打てる手段を徹底的に考えましょう。

5.支払い・入金のサイトを変える

 支払いは遅く、入金は早くしましょう。急ぎではない支払いは遅く、すぐに入金してくれそうな請求書は発行し、入金を急いでもらうのも手です。この機会に、「在宅ワーク」のため、オフィスを使わない企業が家賃交渉してもいいかと思います。

『借りたら返すな!」で伝えたかったこと

 ここで、『借りたら返すな!』の「はじめに」に書いたことをお伝えします。

 私は、コンサルティング会社で企業再生案件を相当数、経験しました。企業再生というと、企業を復活させるかっこいい仕事のようなイメージを持つ方が多いのですが、現場で見たのは、日々の資金繰りに追われ、銀行に追い立てられ、夜も眠れない社長たち……。精神的に追い込まれて自殺してしまった社長もいました。

 実際のところ、企業再生案件として、私たちのところに来る段階では、自力での再生は困難なケースが多いです。

 理由は「お金」がないからです。お金がなければ借りればいいのですが、企業再生のフェーズに入ってしまうと新規にお金を借りるのは非常に難しくなっています。

「銀行は晴れの日に傘を貸し、雨の日に傘を奪う」

 まさにそのとおりです、借り入れができないので、資産売却やリスケジュール(返済猶予)、コスト削減、いわゆるリストラなどをしてなるべくお金を減らさない施策を実行するのですが、再生する時間が稼げないケースが多数あります。

 順調な時期にきちんといた財務戦略を立てていればここまで追い込まれることはなかったんじゃないか、という案件も多くありました。

(中略)

 業績が悪くなるのが分かっているのに、期日通りに銀行に返済している会社。
 税金を払いたくないからと、現預金を減らす無駄な節税に走る会社。
 大事なときに助けてくれないのに、メインバンクを大事にしている会社。

 全部間違っています。

 打つ手は無限です。「諦めたら試合終了」というある漫画のセリフがありますが、この「ピンチをチャンス」にできるのは、諦めないことです。

 諦めずに、全員でコロナショックを乗り切りましょう!