(3)どこで?(あなたが保管申請手続きできる法務局は?)

・遺言者の住所地(住民票のある)の法務局。
・遺言者の本籍地(戸籍のある)の法務局。
・遺言者が所有する不動産の所在地の法務局。

(4)現時点での「自筆証書遺言制度改革」の有効性は?

「終活」ブームと言われて久しいが、「遺言」は高齢者やお金持ちのためだけにあるのではない。人生の棚卸しと脳内整理が簡単にでき、なおかつ法的効力があるのが「遺言」であるというのが筆者の持論である。

 遺言は本来、われわれ日本人の誰も(民法961条では15歳以上)が簡単に取り組めるものであり、とても身近な法律行為なのである。

 そして遺言は何度でも書き直せて、最後の日付のものが法的効力を持つ。法的効力があるということは、あなたの相続人が争族(親族間で遺産を巡って争うこと)等のトラブルに巻き込まれる可能性が極めて少なくなることを意味する。つまり、安心な気持ちで日々過ごせるものだ。あなたのお守り、もしくは自分への将来の手紙であるとも言えるだろう。

 コロナ禍が現在進行中であり、その収束が見えないいま、「自分の想いを書面に残すこと」の大切さは、論をまたないであろう。先日、アナウンサーの赤江珠緒さんが新型コロナウイルスに感染したことが報道され、家族が感染した立場から「いま準備しておくこと」6箇条の長文レポートを公表された。

 それを読むと、子どもの命を守ろうとする母親の母性や、未知の病に直面して戸惑うひとりの人間としての恐怖感が伝わってきて、胸が押しつぶされそうになった。もしこのお手紙を法的効力のある「遺言」の付言として記すことができれば、より確実に親族等関係者に赤江さんの想いが伝わるのではないかと感じた。

 今回の「自筆証書遺言制度改革」は、いままで自分事として捉えられなかった「遺言」が身近になる出来事である。そして、われわれ日本人にとって、「遺言」の形式をとった「自分を見つめ直す機会」でもあり、「大切な人に想いを残す絶好の機会」なのである。

 その意味で、まさに時宜にかなった、日本人に必要な最高のツールなのだと思う。