ところが、病床はあっても集中治療室(ICU)が足りないのでコロナには対応できないという。人口10万人当たりの集中治療病床数は、フランス11.6、ドイツ29.2、イタリア12.5、英国6.6、米国34.7であるのに対し、日本は7.3、韓国は10.6である(Niall McCarthy, “The Countries With The Most Critical Care Beds Per Capita” (Statista, Mar 12, 2020) 。

 東京には10万6449の病床があるが、ベッドが足りないからとホテルを借り上げて軽症者用の病床に転用している(『【独自】都、軽症者はホテルに…病床逼迫で1000室借り上げ』読売新聞4月3日)。ICU類似施設は1567で、感染症病床数は結核病床数を含めても530しかないという。

 愛知県では、病床は5万7247、ICU類似施設は393、感染症病床数は結核病床数を含めても208しかない(東京、愛知の病床数などは、日医総研「コロナウイルス感染症ピーク時予測感染者数と各種病床数(都道府県別)」による)。

 本稿の予測によれば、5月末の東京の入院者数は8134人となる。その1割がICUに行くとなると、813のICUが必要となるが、ICU類似施設は1567しかない。半分をコロナ患者が使うことはできないだろう。

 愛知では、入院者数は606人、その1割がICUに行くとなると、61のICUが必要となる。ICU類似施設は393あるので、おそらく足りることになるだろう。

 日本には病床は多いが、感染症患者や重篤感染者のための病床は少ない。コロナは、感染力は強いが軽症の感染者が多いという特徴を持つ。それに対応するためには、病院に限らず、ホテルなど既存の設備や医療周辺の人員を活用して、軽症患者のための施設や看護体制を維持するとともに、重篤感染者のための医療体制を早期に準備することが必要だった。厚労省は、医療崩壊はしていないと言うが、それは医療機関にとっての判断であって、多くの人がPCR検査を受けることができず、結果として医療機関にアクセスできない状況は、患者にとっての医療崩壊ではないだろうか。

 国民が外出などの自粛に協力的であるのは、「国民にとっての医療崩壊」を感じ、医師にもかかれない中で感染したくないからではないだろうか。

医療体制をコロナに適応するための
政策対応がより必要だったのでは

 以上、東京と愛知について感染者数などが今後どうなるかを考えてみた。日本の医療体制には不備があるが、感染者を急増させる指数関数の力には、既存の医療体制の効率化を求めても対応できない。すなわち、接触を避けて爆発的感染が起きないようにするしかない。しかし、その後では医療体制の効率化が力を発揮する。コロナ感染症のような疾病には適応しない医療体制を、適応できるようにするための能動的な政策的対応がより必要だったのではないか。

追記 記事初出時より、第5段落の「図1は、大都市圏を含む都道府県の新型コロナウイルスの感染者数を示したものである。圧倒的に数が多い東京は右目盛りにしている」の後に「神奈川県と大阪府も同様だ」と加筆しました。(2020年5月11日18:18 ダイヤモンド編集部)