「私たち警備員もコロナと
闘っていると知ってほしい」

 警備員らの残業代の未払い問題などを手掛けている労働組合プレカリアートユニオンの清水直子執行委員長によると、基本給が低いのは警備業界の典型的な賃金構造だという。さらに、中小の会社になると、残業代を含めても年収200万円台というケースは珍しくない。清水執行委員長は警備員の雇用環境について次のように説明する。

「正社員でも基本給が低く抑えられています。このため業界は慢性的な人手不足。長時間の残業をこなしてやっと生活できるという人も多いです」

 雇用環境も良いとはいえない。取材で話を聞く警備員は契約社員や派遣社員といった非正規雇用のほうがむしろ多い。最近では、会社の指示の下で業務に就いているのに、契約は業務委託という“名ばかり事業主”も増えていると聞いた。「警備の質に関わる」という謎の理由で、マスクの着用を禁止している会社もある。

 コロナ禍でエッセンシャルワークに就きながら、こうした警備員の声が聞こえてこないのは、不安定雇用に加え、社員が取材に応じたり、労働組合に入ったりすると、会社が徹底的に“犯人捜し”をするからだともいわれている。そのリスクを冒しながら話を聞かせてくれたAさんはその理由をこう語る。「私たち警備員もコロナと闘っていることを知ってほしかったんです」。

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