仕事ない職場にねじ込み派遣
嫌なら「辞めても構わない」

 Aさんは派遣先担当者と交わしたLINEの画面を保存している。その一部を元にこの間のやり取りを再現してみる。

Aさん「世の中では不要不急の外出をしないよう要請されている中での、『勤務日の確保』は(要請とは)真逆のことではないでしょうか。できましたら、休業手当を支払う方向で考えてください」

派遣先担当者(以下、担当者)「休業手当の支払いはできないことをご了承ください。お休みされる場合は欠勤扱いとなります」

Aさん「欠勤となると、お給料が出ません。雇用調整助成金は使えないのですか」

担当者「派遣会社の売り上げが低下していないので、雇用調整助成金は適用されません。現状、(10万円が支給される)特別定額給付金が、Aさんが使用できる制度です」

Aさん「正規の保育士は感染リスクを抑えながら働き、休業手当も受けています。同一労働同一賃金という点で派遣法に違反するのではないでしょうか」

担当者「自治体と同じように派遣社員全員に補償をしたら、うちの会社がつぶれてしまいます」

Aさん「在宅ワークはできないのですか」

担当者「自治体と相談しましたが、できる業務がないので難しいとのことでした。会社としてもみなさんの健康に気を付けつつ、収入が減らないように最大限の努力をしていますのでご了承ください」

 透けて見えるのは、派遣会社が自らの身は何一つ切ろうとしない姿だ。それどころか派遣保育士を働かせ続けることで、派遣先からの売り上げまで維持しようとしているようにも見える。売り上げが落ちていないので雇用調整助成金が使えないといっても、仕事もない職場に強引に派遣社員をねじ込めば、売り上げも減らないだろう。

 Aさんがいくら具体的な制度を提案したり、法律上の問題点を指摘したりしても、すべて“ゼロ回答”。「コロナの影響で失業した人に比べたら、勤務日を確保してあげたんだからまだいいでしょう、文句ないでしょうと言わんばかりの口ぶりでした。最後は『条件に合わないなら、辞めてくださって構いません』と言われました」。

 Aさんは京都労働局にも問い合わせたが「派遣法に違反しているとまではいえない。派遣先が自治体なので、労働局からも指導はできない。ただ、社会的にはおかしいことだと思う。労働組合に相談したらどうか」と言われたという。これまた“ゼロ回答”である。