「だらだらとインプットを続けるより、1回や2回で集中して覚え、あとはひたすらアウトプットを繰り返したほうが上達しやすい」

 長年の経験則からこうした暗黙知が共有され、ベストな稽古法が確立されたのではないでしょうか。

 そういえば、かつて私は奇跡のような記憶力が発揮された場に居合わせたことがあります。

 中学校に入学したばかりのこと。音楽の先生が、最初の授業で音楽の理論についてひとしきり話したあと、こう言いました。

「じゃあ、今聞いた内容を、自分が先生になったつもりでもう一度繰り返してみなさい」

 一瞬、体がこわばったことを記憶しています。

 授業は真剣に聞いていたつもりですが、同じように再現できるかというと、まるで自信がありません。しかも、先生はライオンのように怖い風貌をしていました(本当はとても優しい先生だったのですが、第一印象はとにかく怖かったのです)。

 こうした状況でたまたま指名された男子生徒が、とんでもないパフォーマンスを発揮しました。彼は、先生の授業をものの見事に、寸分の狂いもなく再現してみせたのです。

 これには、私を含む周りの生徒たちはもちろん、先生自身も驚いていました。この出来事に刺激を受けた私たちは、次の授業からより真剣に臨むようになりました。

 人にはもともと、インプットした情報をアウトプットする能力が備わっています。その能力を発揮させるのは、才能やセンスのあるなし以前に「真剣かどうか」です。もっと“緊張感”を持って、アウトプットを意識したインプットをすべきなのです。

アウトプットの真髄は「能」と「落語」に学べ