売りやすくするための”操作”が行われている

 ここまでは基本的な話で、問題はここからです。

 管理費や修繕積立金は、購入者にとってはある意味、住宅ローンや固定資産税と同じように、マンションを買ったら毎月必ず出ていくお金です。何千万円もする買い物なので、資金計画に余裕がある人ばかりというわけにはいきません。「毎月の負担はできるだけ少ないほうがいい」と考えるのは当然でしょう。

 そこで、売主の不動産会社には、分譲当初の管理費や修繕積立金をなるべく抑えたいという考えが働きます。少なくとも、周辺の競合マンションより高くなることは避けようとします

 そこでどうするか。管理費については、駐車場の利用料を管理費会計に組み入れることで、各住戸の負担額を抑えます。修繕積立金については、将来、値上げをする想定で、分譲当初は低く抑えます

 最近の新築マンションの多くは、土地代や建築費の上昇で分譲価格が年々アップしていることもあり、こうした方法を使って分譲当初に設定する管理費と修繕積立金の金額を抑えようとしているとみて間違いないでしょう。

 管理費にしろ修繕積立金にしろ、本来いくらぐらい必要なのか、いくらくらいが妥当なのかではなく、「いくらくらいなら払ってもらえるか」を基準に決まっているのです。

管理組合として妥当な額をチェックし、見直すべき

 こうして売主の不動産会社によりある意味、”操作”された管理費、修繕積立金の金額は、購入した区分所有者も「最初から決まっているんだから」「プロが計算したんだから」などと思ってチェックしないまま放置されています。

 私たちのコンサルティングの経験上、管理費から支払われる項目の中には割高なものや不要なものが含まれていることが少なくありません。修繕積立金については将来、必要となる工事費に比べて低すぎます。

 妥当な管理費や修繕積立金の金額はどれくらいか。一つの目安として、国土交通省が多くのマンションのデータを集めて平均的にこれくらいという数字(図表5)を公表しています。しかし、これらはマンション全体の戸数や階数(高さ)などによる傾向しか分からず、むしろ「これくらいなら大丈夫だろう」と納得する根拠になっている可能性があります。

 大事なことは、自分たちのマンションにおいて妥当な金額を把握することです。それをしないで放っておくと管理組合のお金が足りなくなり、気がついた時には大幅な値上げやまとまった一時金が必要になったりする危険性があります。

 管理組合として一刻も早く、管理費と修繕積立金の金額の妥当性についてチェックすべきです。また、チェックして問題がなければ、財政面ではひと安心できます。

(本原稿は、ソーシャルジャジメントシステム編、廣田晃崇著『マンション管理はこうして見直しなさい[新版]』からの抜粋です)