ところが、「変えられない」という返答を受けたのだ。理由を聞くと、「3年間、講座を変えない前提で、文部科学省から講座の承認を取り付けているからだ」という意味の説明があった。なにやら、文科省が禁じているというニュアンスが伝わったが、どうやらそうではなく、変更手続きが大変なので、大学としては対応できないという理由だと私は受け取った。
揚げ句の果て、「授業内容の記述は変更できないが、実際の授業内容は変更してよい、ほかの先生もそうしている」という説明があった。この掟で、割を食うのは学生だ。学生に申し訳ないという思いを胸に、以来、その年の初回の授業で、学生が見ている授業内容の記述とは異なる、年間の授業構成と内容を説明している。
「授業内容の記述通りに授業を実施している教員など、むしろ少ないのではないか」「学生も授業内容の記述の正確性を期待していない」という人もいる。しかし、頭で理解できることは、事前に通知や書籍などで読んできてもらい、当日の授業時間は、ひたすら演習して行動や話法で発揮することに費やすプログラムを実施している私としては、内心忸怩(じくじ)たる思いを禁じ得ない。
「学問的真理は、その領域の百年の計であり、毎年変わるものではないし、毎年コロコロと変えてはならない」という考え方をする人もいるかもしれない。しかし、義務教育で教えることならいざしらず、日進月歩の大学教育において、それはないだろう。
単純なミスを修正できない…
大学組織の著しい硬直化
その後3年がたち、これまでワードファイルに入力して大学に提出していた授業内容を、教員が授業管理システムに入力できるようになった。従って、講座名や授業時間帯などの基本情報は大学側で設定してもらうものの、授業内容は自分で変更できることになった。
今年の1月、初めてシステムにアクセスしたときに、講座名が2つ登録されていて、そのうち1つはビジネススキル、1つはビジネスモデルとなっていることに気づいた。
実際に私が実施しているのは「ビジネススキル」の1講座だ。ビジネスモデルの講座は実施していないし、ビジネススキルとビジネスモデルでは、大きく意味が異なる。ビジネススキル演習をしている私が、ビジネスモデルを講義していると学生に誤解させたまま履修登録させてしまってはいけない。
講座名は、日本語と英語で併記されていて、日本語がビジネスモデルと誤っている講座の英語表記はBusiness Skillと正しく表記されている。授業管理システムへ日本語入力をした際の単純な入力間違いだと思われた。
修正内容は「モデル」を「スキル」に入力し直すだけのとても単純なことなので、すぐに対応してくれるだろうということを疑いもしなかった。「訂正するか、そもそもビジネスモデル講座を実施していないので削除していただけますでしょうか」とメールを出したのだが、その返答が予期せぬものだった。