「積極的に主張すること」と「相手を攻撃すること」は別物

 例えば、英語で議論をしている途中で、相手の意見が自分とは違うな、と 思ったとします。そんなとき、グローバルの考え方に慣れていない人は「I disagree with you!」(私は同意できません)と言い切ってしまいます。英語の表現としては100%間違いありません。試験では丸をもらえるでしょう。しかし、グローバル・ビジネスの現場ではおススメできないのです。

 というのも、「I disagree with you!」は、相手の意見を直接否定し、対立構造を生み出しかねない表現だからです。それをはっきりと強い口調で言ってしまうと、相手に対する否定感がとてつもなく大きいものになります。

「主張をぶつけ合うのが海外の流儀」というのは、表層的な理解にすぎません。オープンに意見を言い合うのは確かですが、だからといって、相手を否定することとは別問題なのです。

 グローバル・モードでは、相手が自分と違うことを直接的に否定するのではなく、「I have a different opinion.」(違う意見があります)と切り出します。各々の意見に直接優劣をつけることなく、中立的な立場を保ちながら、新たな意見を議論の場に投げかける形です。

 実際、優れたビジネスパーソンはみな、相手の「違う」意見を立てつつ、相手の感情を傷つけないよう、これでもかというぐらい相手に配慮して意見を言い合っています。地球上どこの国の人であろうと、「あなたは間違っている」と面と向かって言われたら面白いわけがありません。「積極的に主張する」ことと「相手を攻撃すること」はまったく違うのです。

 日本人は空気を読むのが得意と言われていますが、私たちが得意とするのはあくまで日本ローカルの空気です。そのままグローバルに出て無意識に相手の地雷を踏んでしまい、信頼を失うような事態も現実に起きています。これらは言葉の問題というより、前提となるモードの問題なのです。

英語研修では身につかない、日本人に決定的に足りていないスキル
児玉教仁(こだま・のりひと)
イングリッシュブートキャンプ株式会社代表
ハーバード経営大学院 ジャパン・アドバイザリー・ボードメンバー
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー アドバイザー
静岡県出身。静岡県立清水東高等学校を卒業後、1年半アルバイトで学費を稼ぎ渡米。ウィリアム・アンド・メアリー大学を経済学・政治学のダブル専攻で卒業後は、シアトルでヘリコプターの免許を取得後帰国。1997年4月三菱商事株式会社入社。鉄鋼輸出部門に配属され様々な海外プロジェクトに携わる。2004年より、ハーバード経営大学院に留学。2006年同校よりMBA(経営学修士)を取得。三菱商事に帰任後は、米国に拠点を持つ子会社を立ち上げ代表取締役として経営。2011年同社を退社後、グローバル・リーダーの育成を担うグローバル・アストロラインズ社を立ち上げる。2012年よりイングリッシュブートキャンプを主宰。イングリッシュブートキャンプ社代表も務めるかたわら、大手総合商社各社をはじめ、全日本空輸、ダイキン等、様々な国際企業でグローバル・リーダー育成の講師としてプログラムの開発・自らも登壇している。