QRコードと空港一般生活で利用されるようなったQRコードは、もとはトヨタの生産方式の電子化から始まった(写真はイメ―ジです) Photo:PIXTA

レビュー

 電子マネーでの支払いが一般化しつつある昨今。クレジットカードでの支払いができない居酒屋でも、QRコードを使用したサービスを用い、スマホで会計できるところが増えている。気づけば、生活のあらゆる場面でQRコードを目にするようになっている状態だ。これはとてつもなくすごい出来事ということが、本書『QRコードの奇跡 モノづくり集団の発想転換が革新を生んだ』を読むとよくわかる。

『QRコードの奇跡 モノづくり集団の発想転換が革新を生んだ』書影『QRコードの奇跡 モノづくり集団の発想転換が革新を生んだ』 小川 進著 東洋経済新報社刊 1980円(税込)

 QRコードはもともと、トヨタの発注先であるデンソーが開発したものだ。日本だけを見ても、通信や交通などのカギを握る技術として、インフラにおける静かな変革を支えている。先端技術の開発という点でも、欧州発明家賞を日本ではじめて取得するなど、世界的な名声を得ている。

 だがもともとQRコードは必要に迫られて開発され、限定的な用途で用いられたものだった。それがいかにして汎用性の高い技術につながったのか。技術は開発するだけでは意味がない。国内あるいは国際的な舞台で、その規格が標準化される必要がある。本書ではそのプロセスが詳述されており、世界に通用する製品や商品、モデルなどを作りたい人にとって、学びの多い内容となっている。

 また、QRコードのさまざまな活用事例についても紹介されている。「中国ではQRコード決済が一般的」という話はあまりにも有名だが、じつは東京の駅ホームドアの開閉にも用いられているという。