新聞を読む人は年収が高いか?
XとYの間に(正の)相関関係があるときには、次の5つの可能性がある。
(1) X(原因)→Y(結果)の関係がある
(2) Y(原因)→X(結果)の関係がある
(3) XとYが共に共通の原因Zの結果である(Z→XかつZ→Y)
(4) より複雑な関係がある
(5) たまたま
(1)、(2)について。たとえば新聞の購買と年収の間に、正の相関があったとしよう。すると「新聞を読めば年収が上がるかも!」と期待するかもしれない。でも、
新聞を読む(原因)→年収が高い(結果)
ではなく、
年収が高い(原因)→新聞を読む(結果)
である可能性もある。年収が高まって社会的地位が上がったことで、社交上の話題作りなどの理由から新聞を読む必要性が高まったのかもしれないのだ。
(3)について。たとえば「動物園の売上が増えると、美容院の売上も増える。だから美容院の売上が増えたのは、動物園の売上が増えたことが原因だ」と考えるのは、明らかに間違っている。動物園も美容院も平日より休日の方が混雑する。双方の売上が増えたのは休日であるという「第3の原因」の結果であり、それぞれの売上に直接の因果関係があるわけではないと考えるのが妥当である。それなのに
休日である(原因)→動物園の売上が伸びる(結果)
休日である(原因)→美容院の売上が伸びる(結果)
という2つの因果関係の結果どうしを結びつけてしまったというわけだ。このような相関を見かけ上の相関や擬似相関という。
(4)や(5)について。たとえば首都圏の中学受験をする小学生の数は2015年以降、増加傾向にある。またSNSのインスタグラムの利用者数も同じように、ここ5年で利用者数を伸ばしている。でも、だからといって
首都圏の中学受験者が増える(原因)→インスタグラムの利用者が増える(結果)
インスタグラムの利用者が増える(原因)→首都圏の中学受験者が増える(結果)
と考えるのは納得できないだろう。両者に共通する「第3の原因」がある(擬似相関である)ことも考えづらい。
首都圏の中学受験者が増えている背景には、少子化によって子ども1人あたりの教育費が増えたことや、大学入試改革の不透明さからくる不安、個性的でかつ面倒見の良い私立中が増えてきたことへの期待などが考えられる。
また、インスタグラムの利用者が増えた背景にはスマートフォンの普及、「ハッシュタグ」文化の浸透、「インスタ映え」が流行語となったことなどが挙げられる。首都圏の中学受験者とインスタグラムの利用者が同じ時期に増えているのは、これらが複雑にからまっているからかもしれないし、本当にただの偶然かもしれない。
いずれにしても、因果関係が本当に成立するかどうかを見極めるのは大変難しい。特に母集団の一部を調べて得られた相関関係については、細心の注意をはらう必要がある。