偉い人の顔色をうかがっていてはダメ
前提を共有していなければ、間接的で曖昧な表現では気づかれず、言葉すくなでは伝わらず、論理を用いなければ理解されず、質問をしない限り確認しあえない……。低文脈環境でのコミュニケーションは、高文脈のやり方では通じません。低文脈で通じる形にシフトしていかなければならないのです。グローバル・モードとは、超低文脈な環境に対応していくことなのです。
低文脈環境では「察しあう」ではなく「確認しあう」ことが基本です。同質的な濃いコミュニティで「察しあう」ことに慣れてきた住人が、「確認しあう」という真逆のコミュニケーションを強いられるわけです。自分たちにしみ込んだ「察しあう」癖を意識的に直さなければ、うまくいくはずがないのです。まさに冒頭でお話しした「察しあう」から「確認しあう」への、モードの切り替えです。
両者の違いは、ビジネスにも色濃く反映されています。
高文脈の世界では、「決断や行動は、個人と個人の人間関係、とくに権威者の意向が反映される」という特徴が出ると言われています。つまり、物事が偉い人の「好き・嫌い」で決まってしまう可能性があるということです。そうなると、役職に関係なくオープンに議論を交わして何かを決めるのは難しいかもしれません。
一方、低文脈の世界では、「タスク中心。決断や行動は何がなされるべきかで決まり、責任分配がされる」といわれています。つまり、グローバルでは「どうやってタスクがなされるか」「誰が、何を、いつ、どうやってやるのか」に焦点が当てられるということです。
そこでの会議とは、ゴールに到達するために最も正しい道は何かということを、その場に出席した全員が主役となり、論理的で、合理的なプロセスで効率的に決めていく、ということです。会議の参加者は、飛行機の副操縦士席に座るくらいの感覚かもしれません。
一緒に安全な航路を決め、ときに自らも操縦する。自分の言動が結果にも大きな影響を及ぼす。そんな能動的で積極的な姿勢が求められます。「エライ人」が運転する車の後部座席に座り、おとなしくしていれば、いつのまにか目的地に着いているというような、他人任せの感覚ではダメなのです。
ですから、英語が達者になるだけで貢献ができるわけではありません。日本企業の会議にありがちな、何となく決まるだろうという姿勢でいると、イラっとされるか、戦力としてカウントされなくなるか、いずれにしてもあなたの信用は下がるでしょうし、なによりビジネスの成功にはつながりません。
自ら主役の一人となり、論理的・合理的な思考と言動で価値を出せるかどうかが問われるのです。
イングリッシュブートキャンプ株式会社代表
ハーバード経営大学院 ジャパン・アドバイザリー・ボードメンバー
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー アドバイザー
静岡県出身。静岡県立清水東高等学校を卒業後、1年半アルバイトで学費を稼ぎ渡米。ウィリアム・アンド・メアリー大学を経済学・政治学のダブル専攻で卒業後は、シアトルでヘリコプターの免許を取得後帰国。1997年4月三菱商事株式会社入社。鉄鋼輸出部門に配属され様々な海外プロジェクトに携わる。2004年より、ハーバード経営大学院に留学。2006年同校よりMBA(経営学修士)を取得。三菱商事に帰任後は、米国に拠点を持つ子会社を立ち上げ代表取締役として経営。2011年同社を退社後、グローバル・リーダーの育成を担うグローバル・アストロラインズ社を立ち上げる。2012年よりイングリッシュブートキャンプを主宰。イングリッシュブートキャンプ社代表も務めるかたわら、大手総合商社各社をはじめ、全日本空輸、ダイキン等、様々な国際企業でグローバル・リーダー育成の講師としてプログラムの開発・自らも登壇している。