街全体がカンファレンス会場になった

廣瀬:当時はコミュニティをつくろうという意識はあまりありませんでした。ただ、参加して終わりではなく、ビジネスなど、実際のアクションにつながる仕掛けが必要だと考えていました。

藤田:具体的にはどうやってコミュニティづくりに舵を切ったんですか。イベント型からカンファレンス型に変えた時に、例えば、ゲストや中身も変えたのでしょうか。

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廣瀬:一つはミートアップに力を入れました。これは、プレ開催時に学んだんですが、とりあえずいろいろなカンファレンスやライブをやったけれど、どれも単発で終わって、「人が交わらない」という印象が残りました。

 そこで本格開催となった2017年度からは、カンファレンスとミートアップを組み合わせて、来場者が交流できる場を用意したんです。映画や音楽も活用して、その場に偶然訪れた人たちが一緒に楽しめるようにしました。結果的に、これがいろいろなつながりを生んで、新しい動きになっていったんです。

藤田:参加者を混ぜ合わせることが、コミュニティづくりの起点になったわけですね。

廣瀬:ただ、「街全体を活用したコンベンション」というコンセプトは、最初からやりたくて始めたわけではありませんでした(笑)。札幌のコンベンションセンターは市街地からかなり遠い場所にあるんです。そこで開催しても、人がほとんど来ないかもしれないという懸念があったんですね(笑)。

河原:それで、やむなく、札幌市内にいろいろな会場を設置して展開した、と。

廣瀬:結果的にこれが面白い方向に進んでいきました。いろんな場所でイベントやカンファレンスが開かれて、ミートアップで交流が生まれる。そこでつながりができたら、またほかの会場を回る。街全体を回遊してもらいながら、街のあちこちでいろいろな情報が発信されるようになったんです。街全体がメディアになっていく。そんな感覚がありましたね。

 本来は大きなコンベンションセンターで、すべてを集約して、参加者を混ぜた方が効率はいい。ただ結果論ですが、街を回遊するコンセプトは、なかなかおもしろい取り組みだと思っています。