性別適合手術のための海外渡航をアテンドする「性転師」の実態性別適合手術はおおきく2つに分けられる(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「性転師」のパイオニア
性転換ビジネスのアテンド業とは

「性転師」とは、性別適合手術を受けるために海外に渡航する人を手助けする「アテンド業」に携わる人々を指す。もちろん正式な職業名ではない。本書『性転師 「性転換ビジネス」に従事する日本人たち』の造語である。

『性転師 「性転換ビジネス」に従事する日本人たち』書影『性転師 「性転換ビジネス」に従事する日本人たち』 伊藤元輝著 柏書房刊 1600円+税

「師」という字は、詐欺師や地面師といったなにやら怪しげな仕事を連想させるが、著者はこの言葉に、医療従事者でもないのにリスクを伴う手術に一民間人が関わらざるを得ない状況を込めたという。グレーな領域に関わる仕事であることを強調するために、あえて怪しい響きを持つ言葉を選んだということなのだろう。

 共同通信社の記者である著者が、取材を通じてたまたま坂田洋介という人物と知り合ったことが、本書が生まれるきっかけとなった。大阪で「アクアビューティ」という会社を営む坂田は、実はアテンド業のパイオニアだった。

 もともとはファッション業界の人間で、アパレルのデザイン会社を起こし、いまや懐かしいトラサルディのジーンズなどを手掛けていたものの、ビジネスがうまくいかなくなり、2002年から美容整形手術をタイの病院で受ける人々の仲介をするようになった。洋服の買い付けで出かけた折、現地の繁華街で出会ったきれいな女性たちが、口々に同じ美容整形の病院の名前を挙げるのに、商売人としてのアンテナが反応したのだ。