定年を病にしない『定年を病にしない』 高田明和 著 ウェッジ 1300円(税別)

 さすれば、人生の2つの大変化のうち「定年」をテーマとする本書『定年を病にしない』を読むことで、「新しい生活様式」への対応のヒントがもらえるかもしれない。

 本書は、定年という大変化を迎えるにあたりできること、気をつけておくべきことなどを、著者自身が相談を受けたり、目にしてきたりした多数の実例を紹介しながら述べる。特に60歳定年とした場合の直前10年間を生きる50代に向けて、今から準備しておくべきことをアドバイスしている。

 著者は医学博士で、浜松医科大学名誉教授の高田明和氏。米国ロズエル・パーク記念研究所、ニューヨーク州立大学助教授、浜松医科大学教授を歴任し、血液学、生理学、大脳生理学を専門とする。脳科学、心の病、栄養学、禅などに関するベストセラーを含む多数の著書がある。

定年後に「肩書」がなくなり
路頭に迷う人、暴言を吐く人

 本書には、こんな実例が紹介されている。

 大手電機メーカー技術開発部の50歳の課長が、かつての上司で定年退職した元部長がなかなか再就職できないことを知り、驚く。その元部長は、技術者としてかなり優秀だったからだ。

 元部長が再就職できないのは、まず、年収1000万円以下の会社は就職先として目に入っていなかったから。また、どうやら彼は、昔の肩書を鼻にかけ、上から目線の態度を常にとっているらしい。そんな性格では、いくら優秀でも欲しがる会社はない、ということだった。

「昔の肩書が通用しない」というのは、現在50代で何度か転職を繰り返してきた私にも経験がある。上記の実例のように肩書を鼻にかけていたわけではない。しかし、退職後、在職時の肩書を告げて、以前は仲良くしてもらっていた取材相手に会おうとしても、なかなか会ってもらえなかったことがある。

 役職などの肩書は、その会社における評価にすぎず、会社の外に出てしまえば通用しない。そんなことは、ちょっと考えればわかるはず。だが、退職してリスタートするにあたって若干舞い上がっていた私は、ついつい昔の肩書がどこでも通用すると勘違いしてしまったのだ。