ポリティカル・コレクトネスは避けて通れない

 ポリティカル・コレクトネスは、直訳すると、「政治的な正しさ」ですが、1980年代でアメリカを中心に始まった「言葉の使い方」により差別や偏見を助長させない、政治的な観点から見て正しい用語を使おうという運動から生まれた概念です。

 例えば、「ビジネスマン」よりは、ポリティカル・コレクトネス的には「ビジネスパーソン」が正しい、ということです。

 「人」や「人類」についても、「man/men」ではなく「people」にすべきという動きも出ています。警察官もPolicemanではなくて、Police officer。 消防士もFiremanではなくて、Fire fighterです。

 日本でも「看護婦」が「看護師」という呼称に変わるなど、少しずつ対応が始まっています。ただ、行き過ぎると言葉狩りになりかねず、「窮屈になる」「本音で話せない」「表現の自由を奪うのではないか」という懸念があるのも確かです。

 しかし少なくとも、グローバルでビジネスを行なう以上は、何がポリティカル・コレクトネスに当たるのかを気をつけなければなりません。さもなくば、無知や非常識と疑われ、最悪の場合、差別主義者というレッテルを貼られるかもしれないからです。

 よくよく考えたいのは、言葉は気持ちの発露であるということです。NGワードや事例のリストを丸暗記するのではなく、どういった言動が弱者にとって優しくないのか、人を傷つけるのかを学び、その気持ちの発露としてポリティカル・コレクトネスに留意する。

 つまりは、「人と人は違う」ということを受け入れ、自分と違う人をリスペクトする、その大切な価値観を言葉や話す内容に反映していくことなのだと思います。

G7でダントツ最下位!ステレオタイプな価値観が「事故」を招く

 別の記事で述べますが、人を説得する際に大切な三要素の1つが「エトス」(Ethos)と言われるあなた自身の信頼性です。

 人をリスペクトしていないように見える発言は、大きなダメージにつながります。最悪の場合、関係性が壊れかねないNG話題もありますので、書籍の巻末付録も併せてご覧ください。(また本書ではローカル・モードとグローバル・モードの違いを明確に説明するため、あえて日本人をステレオタイプ化した表現を用いた箇所もあります。)

 いずれにせよ、グローバル・モードでは、皆が安心して働ける環境を積極的に作っていくことが、会議体を成功に導くカギとなります。

G7でダントツ最下位!ステレオタイプな価値観が「事故」を招く
児玉教仁(こだま・のりひと)
イングリッシュブートキャンプ株式会社代表
ハーバード経営大学院 ジャパン・アドバイザリー・ボードメンバー
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー アドバイザー
静岡県出身。静岡県立清水東高等学校を卒業後、1年半アルバイトで学費を稼ぎ渡米。ウィリアム・アンド・メアリー大学を経済学・政治学のダブル専攻で卒業後は、シアトルでヘリコプターの免許を取得後帰国。1997年4月三菱商事株式会社入社。鉄鋼輸出部門に配属され様々な海外プロジェクトに携わる。2004年より、ハーバード経営大学院に留学。2006年同校よりMBA(経営学修士)を取得。三菱商事に帰任後は、米国に拠点を持つ子会社を立ち上げ代表取締役として経営。2011年同社を退社後、グローバル・リーダーの育成を担うグローバル・アストロラインズ社を立ち上げる。2012年よりイングリッシュブートキャンプを主宰。イングリッシュブートキャンプ社代表も務めるかたわら、大手総合商社各社をはじめ、全日本空輸、ダイキン等、様々な国際企業でグローバル・リーダー育成の講師としてプログラムの開発・自らも登壇している。