需要減による雇用維持の視点から
副業を議論か
副業には、2つのパターンがある。1つは、本業では不足する生活費の獲得を目的とするもの。もう1つは、本業とは異なる自己実現を追求するためのものだ。現在は、本業の所属会社の需要減を背景に、前者の場合を想定した議論がなされている印象だ。しかし、後者の視点が政府の議論には抜けているように思う。
現在の副業の議論で、政府が主に想定しているのは、本業では十分な生活費を確保することが難しくなったため、副業で不足分を充足するものだ。例としては、居酒屋勤務の女性が勤務時間の減少を理由にスーパーで副業して生活費を稼ぐケースなどが挙げられる。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休業要請などにより、十分な給料を支払えなくなった会社に勤務していると、本業以外の雇用契約を結んで働かざるを得ない人が多いだろう。
こういったケースの場合、残業時間を本業と副業で合算して制限することに労務管理上、意義はある。実質的に本業の収入減が副業実施の原因であり、本業の収入減が解決すれば、副業をせずに済むからだ。
副業の本質は
本業以外の自己実現の追求
しかし本来、副業は本業以外の世界に接することで多様性ある人生を送るための手段である。副業は趣味の延長で仕事化したものであることが意外と多いと、筆者は考える。
趣味の延長線上にあるものを、本業の残業時間の上限規制と合わせて導入することには違和感がある。本業とは違う自分を模索する時間について、本業の所属会社が労務管理を背負わなければならない道理はないからだ。個人が自己責任で負うべき話であるし、個人としては勤務時間外の活動を本業の勤務先に干渉されたくないだろう。