野党つぶしの切り札となる
「禁断の政策」とは?

 この状況を考えれば、安倍首相は解散総選挙に打って出るべきだろう。さまざまな批判にさらされて、安倍政権は求心力を失っている。「政権末期」だという声も聞かれる。だからこそ、安倍首相がもう一度力を得て「レガシー(遺産)」を打ち立てたいならば、総選挙に勝つしかない。

 勝算は十分にあると思う。繰り返すが、コロナ禍という未曽有の危機において、国民を救うためにカネを出せるのは政府だけなのだ。たとえ、1次補正・2次補正予算の評判が芳しくなかったとしても、追加でどんどんカネを出して国民の要求に応えることができるのだ。

 自民党は、緊急経済対策で、「一律現金給付」という大衆迎合政策に踏み込んでしまい、経済財政運営のタガが完全に外れてしまったように見える(第244回・P6)。自民党が解散総選挙を断行し、容赦なく追加の支援策を異次元に積み上げたら、野党は手も足も出なくなる。

 安倍政権による野党つぶしの切り札は、「消費税ゼロパーセント」である。絶対に自民党がパクれないはずだったものだ。それを、あえて安倍政権がパクって公約にしてしまうのだ。野党が訴えられる政策は何もなくなってしまう。

 麻生財務相は、「消費減税は考えていない」と繰り返し発言している。もちろん、恒久的な消費減税は難しいだろう。だが、緊急経済対策として期限を区切って消費税を凍結することは、十分あり得る。

 世界保健機関(WHO)が中国寄りと見るや、即座に拠出金増額を決めて、WHOの日本への支持を取り付けた麻生財務相だ(第236回・P3)。その政治的な勘で、野党潰しに豹変することはあり得るだろう。

 コロナ禍を理由に際限のないバラマキを行うことには、将来世代に過大なる国家の借金返済の負担を負わせることになり、筆者は基本的に反対だ(第133回)。だが、安倍政権は権力を握るためにちゅうちょなくそれをやりかねない。

 そして、国民は現在の危機を乗り越えることに必死で、将来のことなど考える余裕はない。自民党がバラマキをやれば、国民は歓迎するはず(第163回)。筆者が言いたいことは、野党はそうした事態を想定した危機感を持つべきだということだ。