理化学研究所と富士通が開発したスーパーコンピューター「富岳」が、スパコン性能ランキングの4部門で世界一になった。前世代機「京」の反省を生かし、海外の先端技術を活用する「脱・純国産」戦略で栄冠をつかんだ。(ダイヤモンド編集部 大矢博之)
「協業や水平分業なしに、最先端のトップのものはつくれない。他の半導体会社の最新の技術を取り入れることで、世界一の性能を達成できた」
6月23日、理化学研究所計算科学研究センターの松岡聡センター長は記者会見でこう力を込めた。
理研と富士通が開発したスーパーコンピューター「富岳」が、高速計算技術の国際会議「ISC 2020」で22日に発表されたスパコン性能ランキングの4部門で首位に立った。
基本的な計算速度を競う部門では、富岳は1秒間に41.5京回(京は1兆の1万倍)計算する性能を記録。2位の米オークリッジ国立研究所のスパコン「サミット」に、2.8倍の差をつけた。
この他にも、産業向けアプリケーションでよく使われる計算性能や、AI(人工知能)学習向けの性能、ビッグデータ解析性能の3部門で1位になった。基本的な計算速度を競う部門で日本のスパコンが首位に立つのは、理研の前世代機「京」以来9年ぶりだ。
ただ、松岡センター長は「ベンチマークで1位を取ることを目的としたマシンではない。あらゆるアプリで最高性能を出すことを目指してつくった」と再三にわたって会見で強調した。背景には、京の産業利用が思うように進まなかった苦い経験がある。