一方で、聴衆にマスクの着用や密集しないよう距離を開けることを要請しつつ、基本的には従前どおり街頭活動を行っている候補者もいる。そうした候補者もインターネット中継と「見逃し」配信は行っている。

 しかし、こうしたこと以上に今回の都知事選を静かなものにしているのは、争点が見えないことに加えて、今の東京に必要な政策は何かが見えにくいことがあるだろう。

 現職がスキャンダルで辞任した後の選挙であれば、都政の刷新や「改革」といった言葉は有権者に響きやすいかもしれないが、任期満了に伴う選挙では、対抗馬の候補者たちは、現職の4年間の都政の問題を指摘して改善案を示すか、欠けている部分を補う独自案を出すか、そうした主張をすることになる。

 ところが今回の選挙は、現職の都政にはさまざまな問題点が指摘されてきてはいるものの、やはり新型コロナ感染症への対応が前面に出過ぎて、そうした問題も一般有権者の目には見えにくくなってしまっているようである。

 そこで、今回の都知事選において論争に付されるべき政策は何か、別の言い方をすれば、今東京に必要な政策は何かについて、考察してみたいと思う。

さまざまな問題を抱える
東京の現状

 東京都は、言うまでもなく日本国の首都であり、多くの政府機関のみならず、大中小企業の本社が集中的に立地し、日本の人口の1割以上の1400万人近くが居住する、日本最大の都市であり都市圏である。少子高齢化、人口減少社会といわれる日本であるが、東京の人口流入超過傾向はまだまだ続いている。多くの地方都市では積極的に評価される人口増加も、東京では多くの課題を生む問題である。

 山手線を中心軸として多くの鉄道路線が乗り入れ、混雑率が200%近くまでいっている路線もある。同じく都心を中心軸に幹線道路が放射状に延びているが、こちらも交通量は多く、自動車での移動が中心の地方都市に比べればまだマシかもしれないが、時間帯によっては渋滞が随所で見られる。

 こうした鉄道網や道路網は東京の近隣県からのものを含め、多くの人を東京都心に運び、都心を中心に昼間人口は膨れ上がる。むろん、それは多くの事業所が東京都心に集中しているからであるが、逆に言えばそれが高い混雑率や渋滞を引き起こしている。

 また、東京都は東京と聞いてイメージされる高層ビルが立ち並ぶ地域のみならず、奥多摩の山間部、そして日本最南端の沖ノ鳥島や最東端の南鳥島を含む小笠原諸島、航空機や高速船で比較的手軽に訪れることができる伊豆諸島によって構成されている。