長期化するコロナ禍で「新しい生活様式」が推奨され、会社の方針や感染の状況で在宅ワークと出社が入り乱れているこの時期。なかなか「生活のリズム」をつかめないまま、仕事に集中できない日々が続いてしまっている人もいるのではないでしょうか。
「あたりまえのことがあたりまえにできない僕らにとって、変化があるだけでも厳しい」と話すのは、発達障害のひとつであるADHD(注意欠陥・多動症)の当事者である借金玉さん。早稲田大学卒業後、大手金融機関に勤務するものの仕事がまったくできずに退職。その後、“一発逆転”を狙って起業するも失敗して多額の借金を抱え、1ヵ月家から出られない「うつの底」に沈んだ経験をもっています。
近著『発達障害サバイバルガイド──「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』では、借金玉さんが幾多の失敗から手に入れた「食っていくための生活術」が紹介されています。
働かなくても生活することはできますが、生活せずに働くことはできません。仕事第一の人にとって見逃されがちですが、生活術は、仕事をするうえでのとても重要な「土台」なのです。
この連載では、本書から特別に抜粋し「在宅ワーク」「休息法」「お金の使い方」「食事」「うつとの向き合い方」まで「ラクになった!」「自分の悩みが解像度高く言語化された!」と話題のライフハックと、その背景にある思想に迫ります(イラスト:伊藤ハムスター)。連載一覧はこちら。
「孤独で自由、かつ高いストレス」が危ない
お酒を呑まないと眠れない。そういう人はたくさんいると思います。僕もかつては、アルコールと睡眠薬の依存症で入院にまで至ったことがあります。依存のメインが睡眠薬の乱用でアルコールは副次的なものだったので、幸いなことに現在でもアルコールを完全に断つことなく、かといって一人で呑むことはほとんどない。そういうところでお酒との距離を保てています。
「お酒をやめよう」なんてことを僕はいいません。僕はかつてお酒を売る仕事をしていましたし、自分自身ひどく痛い目をみてもお酒が素晴らしい文化であることは事実だと思います。しかし、お酒はコカインやヘロインといったものと同じく、極めて身体に害が大きく依存性も強いハードドラッグです。ADHDの人は依存に弱いという研究もありますが、実際問題発達障害を抱えながら長い期間、お酒と上手に付き合っていくのはとても難しいといえるでしょう。
「家に帰ったらとりあえず酒を呑む」「酒を呑まないと眠れない」という状況は、非常にいいにくいことですがアルコール依存症への最初の一歩を間違いなく踏み出しています。
依存に陥りやすい環境というのは、ざっくりといえば孤独で自由、かつ高いストレスがあり、娯楽や息抜きの欠如した場所です。
たとえば、自宅で一人仕事をしていてその気になればいつでもお酒に手を伸ばせる。しかし、仕事のスケジュールはタイトでプレッシャーは大きい。かつ、生活は不規則で仕事の始まりと終わりが定まっていない。時間に関係なく、仕事が終わったら「ここからはプライベートな時間だ」という区切りの意味でお酒を呑んだりする、もちろん仕事をするのと同じデスクで……。
そういうワークスタイルの方は、間違いなくアルコール依存に陥りやすいといえるでしょう。ちなみに、僕はこの条件に100%合致しているので、自宅のお酒は妻の許可がなければ呑めないルールに設定しています。僕は自分の意志でお酒をコントロールできるという考えを持っていません。