ただ、そこで「累計」という積み重ねの感染者数をマスコミが使ってしまうと、感染者への差別やイジメを引き起こし、それがひいては感染拡大を悪化させる恐れがある、と申し上げているだけだ。

 マスコミが過度に恐怖や不安を煽って、社会に「コロナ差別」が蔓延すると、地域社会から袋叩きにされたくないという気持ちから、コロナの症状があっても隠す人たちが出てくる。つまり、「感染者」の数を積み上げて大騒ぎをすることは、「注意喚起」どころか、感染者をわかりづらくさせるという「害」にしかならない可能性があるのだ。

日本経済の実態を煙に巻く
GDPの「累計の罠」

 それに加えて、筆者がここまで「累計」を問題視するのは、今起きている現実を正しく認識することができず、事態をさらにこじらせてしまうからだ。日本社会はこれまでも、こうした「累計の罠」にたびたびハマってきた。

 わかりやすいのが、日本経済である。

 日本人の中には、日本のことを「かつてよりも勢いはなくなったが、まだまだ世界の中ではそれなりの経済大国だ」と思っている人がかなりいる。その心の拠り所なっているのが、GDP(国内総生産)の総額である。中国に抜かれてしまったが、まだ世界で3位の座をキープしているので、それなりに持ち堪えているという印象なのだ。

 ただ、ここに大きな落とし穴がある。GDP総額は「生産性×人口」という典型的な数字の積み上げなので、人口の多さがアドバンテージになる。実際、主要先進国のGDPランキングの並びは、人口3億2000万人のアメリカ、人口1億2000万人の日本、そして8200万人のドイツという具合に、きれいに人口と比例している。

 つまり、すでにピンピンしている人たちを積み上げた「累計感染者」が、今の日本のコロナの感染拡大の実態を表していないのと同じで、1億2000万人という人口を積み上げた「GDP総額」も、日本経済の実態を表していないのだ。