数学ができる人は、問題が難しければ難しいほど、その原理・原則・定義に戻っていきます。そして問題を細かく分解し、問題の本質を捉え、基本問題の集合として問題を解いていきます。

 拙著『大人のための数学勉強法』で「定理や公式の証明をする」という重要な勉強法を紹介しました。この姿勢を貫いて自分が使う定理や公式のすべてを証明できるようになっていれば、いつでも原理・原則・定義に戻ることができます。これは遠回りに思えるかも知れませんが、特に難問を解く際には最短距離であると言っても過言ではありません。

できる人は「基本的な考え方」を使っているだけ

 数学が得意な人で、解法を丸暗記してそれをあてはめて解いている人はいません。もちろん典型的な問題を、典型的な解法で解くことはあるでしょう。でも、それにしても解法を丸暗記しているのではなく、その解法の意味や背景にある「物語」をつかみ、誰かに好きな映画の話をするような感覚で解いています。

 私は自分が数学を教えるようになって、なぜ自分は数学の問題が解けるのかを考えました。解法を暗記しようとしたことはないし、そもそもどんなに既存の問題の解法を知っていたとしても、新傾向の問題が解ける理由にはなりません。

 自己分析の結果、私は自分が問題を解くとき、できあがった「解法」ではなく、そのずっと手前にあるいくつかの「基本的な考え方」を試したり、それらを組み合わせているに過ぎないことに気が付きました。そして、たくさんの生徒さんを教えているうちに、この「基本的な考え方」を知っているかどうかこそ、数学ができる人と数学ができない人の決定的な差であると確信したのです。

 ですから数学ができるようになるには数学の「基本的な考え方」をマスターすればよいのです。しかも、安心してください。その「基本的な考え方」=アプローチにはそんなにバリエーションがあるわけではなく、たったの10しかありません。