「数学は苦手だけれど、何とかできるようになりたい」人のための『大人のための数学勉強法』が発売された。きたみりゅうじ氏のイラストとともに、数学の知識や学習のコツをわかりやすく紹介する画期的な内容は、発売すぐに大きな反響を呼んでいる。今回はその最大の特徴である、「どんな問題も解ける10のアプローチ」の概略を紹介する。

数学が苦手な人の典型的なパターン

 数学が最初からできなかった訳じゃない。むしろ小学校の算数は(文章題はちょっと苦手だったけど)そこそこの成績だったし、中学でも1〜2年生位は悪くなかった。でも3年生頃から急に点数が取れなくなり、高校に入ると完全に低迷。授業中はノートをきちんと取り、試験前も問題集を二度、三度と解いたのに、その努力が報われない。他の科目は平均点以上を取れているのだから、きっと自分には数学の才能がないに違いない……

 今、「自分のことだ…」と思いませんでしたか?

 じつはこれは、私の塾の門を叩く生徒さんに見られる最も典型的なパターンです。「数学の才能がないんだ」と諦め、数学が嫌いになる……私はこれまでそういう生徒さんを本当にたくさん見てきました。こういう生徒さんは真面目で、努力することの大切さも知っているので、他の科目の成績は決して悪くありません。それ故にますます「自分は文系なんだ」と思い込んで数学と決別してしまいます。

 真面目に勉強しているのに、数学ができない生徒さんに
「どうやって勉強してる?」
と聞くと、決まって
「解き方を覚えています」
と例題の解法にアンダーラインを引きまくった教科書を見せてくれます。解法を覚えることが数学の勉強だと思い込んで(込まされて)しまっているのです。

できる人は原理・原則・定義に戻って問題を分解する

 数学ができる人には1つ大きな特徴があります。それは問題の対象になっている事柄について、その原理・原則・定義に戻ることができる、ということです。数学ができる人は皆、異口同音に「どんな応用問題も基本問題の組み合わせに過ぎない」と言います。

 これは決して格好つけて言っているわけではないのです。確かにどんな問題も基本問題に分解することができます。ただし、その分解ができるようなるためには、その問題で扱われている事柄の原理・原則・定義がわかっていなければいけません。

・そもそも円周角って何だっけ?
・そもそもベクトルって何だっけ?
・そもそも微分って何だっけ?

 といった「そもそも何なの?」という質問にいつでも答えられるようになっていることが必要です。