どんな問題も解ける「10のアプローチ」とは

 10のアプローチとは次のようなものです。

(1)次数を下げる
(2)周期性を見つける
(3)対称性を見つける
(4)逆を考える
(5)和よりも積を考える
(6)相対化する
(7)帰納的に思考実験する
(8)視覚化する
(9)同値変形を意識する
(10)ゴールからスタートをたどる

 数学ができる人は、問題を解こうとするときたいていこれらのアプローチを使います。

「計算が複雑だな」
→「次数を下げられないか?」
「随分大きな数の計算だな」
→「周期性があるんじゃないか?」
「突然一般化するのは難しそうだ」
→「思考実験しよう!」

といった感じです。そしてこの「10のアプローチ」が威力を発揮するのは問題を解くときばかりではありません。数学ができる人は、未知の定理の証明や自分ができなかった問題の解法を見るとき、これらのアプローチのうち、どれを使っているかを明らかにしようとします。

 これができるようになると、定理の証明や解法において、今までは天から降ってきたかのようにしか思えなかった鮮烈な発想に理由があることがわかるようになります。そうなれば数学の天才たちが駆使した「論理」を追いかけられるようになります。

 『大人のための数学勉強法』では、問題を解くときに私がどのように原理・原則・定義にまで遡って問題を分解しているか、そしてどのように「10のアプローチ」の中からその問題に適したアプローチを使っていくかをできるだけ明文化することを試みました。

 本来であれば、その詳細をご説明したいところですが、ウェブ上でみっちりと数学の解説をするのは、まだまだ厳しいものがあります(笑)。ここでは、『大人のための数学勉強法』でご協力いただいた、きたみりゅうじさんのイラストとともに、そのポイントを簡単にまとめていきましょう。もちろん、本では実際の問題を解きながら詳細に解説していますので、ご参照いただければ幸いです。