産業崩壊を阻止するべく
音楽業界3団体がタッグ

 われわれを基軸に考えただけでも、これほど多くの人が関係していて、こんなにも多くの業種が絡み合っている業界だったんだなと、今回のコロナ禍であらためて感じました。冷静に考えると、ものすごく広範囲に影響が波及しているわけです。

 割と皆さん、「アーティストが困っている」という見方をされますが、アーティストももちろん大変ですけれども、われわれの方から見ると実はそれに従事している人たちが非常に過酷な状況を強いられている。資金的余力のある大きな会社組織であれば、ある程度の生活は保証されますが、フリーランスの方というのは「職がない=収入がない」ということなのです。

 いつかコロナ禍が収まって「ようやくライブや音楽フェスを再開できる」という時が来たとき、それらを実際に動かすことのできる専門職の人が業界から去っていたら、再開自体が不可能になります。一般の方がポッと入ってきて仕事ができるという職種ではなく、専門的な知識やスキルがないと成り立たない。そこを一番に救わないでどうするんだと。音楽産業のなかなか日の当たらない部分をどうやって救うか、これが今、特に深刻な問題ですね。

――6月に日本音楽事業者協会、日本音楽制作者連盟、そして中西さんが会長を務めるコンサートプロモーターズ協会の3団体で「Music Cross Aid」を立ち上げましたが、それが理由でしょうか。

 その通りです。われわれを含む3つの団体で、ライブエンターテインメント産業の従事者を支援するための基金を立ち上げました。

 政府の2020年度第2次補正予算案が5月27日に閣議決定され、その中でありがたいことに文化芸術支援に560億円が計上されました。われわれはその前からだいぶ政府に働き掛けており、それが功を奏した部分もあります。

 ただ、そこに対する支援の申請方法が、ご多分に漏れず難しい。そして、どこまでどのようにフォローできるのか、現段階ではなかなか見えないところもあります。国が救える部分と、救えない部分がやはり出てくるのではないかと。経済的に一番弱い人たちは、もしかしたらその救えない部分に入る恐れがあるわけです。

 そのことを考えると、全て国に頼るのではなく、われわれはわれわれでできることをやっていかなければならない。そのような思いの下、3つの団体が協力して公益財団の中に基金をつくりました。

――クラウドファンディングではなく公益にこだわった理由はありますか?

 クラウドファンディングは、ピンポイントで困っている方を救うパターンが多いですが、私たちはより幅広い方々をどのように支援していくか、支援方法もきっちりと定めていかなければならない。そうしたときに当然、公益性が求められます。そこで3団体が話し合い、実現までの難易度は一番高いとされていましたが、公益財団という形を取りました。

政府のガイドラインではなく
より建設的なガイドラインが必要

――中西会長は6月16日、ニッポン放送のラジオ番組「いま、音楽にできること」で、「政府の決めたガイドラインでは経済的に成り立たない」旨をコメントされていました。これについて詳しく解説していただけないでしょうか?

 例えばライブハウスでソーシャルディスタンスを守る場合、200人のキャパシティーに対して実際にお客さんを入れられる数は30~40人になるかと思います。もちろんそれでも再開する意義はあるかもしれませんが、経済的にはやればやるほどマイナスです。チケットを5倍とか10倍とかの価格で売るわけにもいかない。何より、そもそものライブの在り方ではないと思うのです。となると、当初の政府のガイドラインに沿ったとしても経済的にライブは成り立ちません。

 新型コロナというのは未知のウイルスです。そのため、まずはウイルス専門の方が専門家委員として政府と話を始められました。そうするとやはり、その視点でルールやガイドラインは作られます。

 それ自体は、音楽産業だけでなくおそらく今の世の中全体がそうだと思うので、仕方ありません。ウイルスのことはウイルスの専門家しかわからないので。でもその視点で最初にできた公文協(全国公立文化施設協会)のガイドラインは、とてもじゃないですがわれわれがライブを再開するための指標になるものではありませんでした。

 国や東京都、大阪府のガイドラインがそれぞれ違うように、専門家によっても当然、見解が異なります。「マスクをして会話もしない映画館をソーシャルディスタンスにする必要はあるのか?」とか「それなら満員電車はなぜ規制しないのか?」といった意見がある一方で「わずかでもマスクから飛沫が漏れる可能性があれば規制するべき」だと言う先生もいるわけです。

 これはもう仕方がないことです。誰も答えがわからないので、誰の責任でもないと思います。それよりも、未来を見据えて変わっていくしかないんですよね。

 当たり前ですが、われわれも危険なことはしたくありません。そのため、たとえ意見は違っても多くの専門家のご意見に耳を傾けつつ、時には折衷しながら、音楽活動再開のためにもう少し建設的な施策を打てないか、国と調整しながら新たなガイドラインを作成しているところです(編集部注・取材後、7月10日にリリース)。