花や貝にも黄金比は見つかる
縦と横の長さの比が黄金比になっている長方形のことを特に「黄金長方形」という。世界共通のデザインであるクレジットカードや通常サイズの名刺、トランプ、液晶テレビ、新書なども縦と横の比が黄金比になっていて、黄金長方形である。
黄金長方形には、最大の正方形を除くと、残った長方形もまた黄金長方形になるという非常に興味深い性質がある。つまり、黄金長方形から正方形を除くという作業は永遠に続けることができて、その度に相似な(同じ形の)黄金長方形を(理論上は)無数に作ることができるのだ。
また、黄金長方形の中の正方形の角を滑らかにつないでいくと、渦巻きの曲線ができる。この渦巻曲線は「対数螺旋(らせん)」または「黄金螺旋」と呼ばれ、オウム貝やヒマワリの種の配列、渦巻銀河の腕など、自然界に多く見つけることができる。
黄金比を使っている芸術作品や建築物、商品デザインは本当に多い。AppleのりんごマークやGoogleのロゴも黄金比をもとに作られている。しかしこれは、「黄金比を守っていれば、バランスよく見栄えがいい」という認識が広まっているのだから、当たり前と言えば当たり前である。
黄金比について真に驚くべきは、オウム貝やヒマワリなどの貝や花から銀河に至るまで、自然界の多くにこの値が現れることだろう。たとえば鷹が獲物を襲うときの軌跡(飛行した跡)や、遺伝子情報を伝えるDNA分子のらせん構造にも黄金比は見つけることができる。
(本原稿は『とてつもない数学』からの抜粋です)