政府のチラシによれば、「例えば家族4人なら5000×4=最大2万円分」とあるが、そこには大きな前提がある。まず、先払いでお金を使わなくてはいけない点だ。家族で2万円受け取るためには、8万円使わなくてはいけない。コロナ禍で景気の先行きが見えない今、家計防衛とは真逆の行動にも思えないか。
しかし、気が遠くなるような手続きを延々やってここにたどり着いた人は、必ず元を取ろうと思うだろう。必ず2万円を使わないと損だと思ってしまう。マイナポイント付与の期間は2021年3月末までだが、早々に使い切ろうとするのではないか。本当に必要な消費なら問題ないが、ポイントを受け取りたいがための無理やり消費になってしまえば、それは「トクした」といえるか怪しい。送料無料にしたいがためにあまり欲しくない余計なものを買ってしまいがちな人は、くれぐれも注意した方がいい。
ポイントとは「お金を使いたい人」向きのシステム
そもそも「ポイント戦略」とは、まずお金を使ってもらい、かつ、付与したポイントでまた消費をしてもらおうというものだ。使った金額に応じて還元されるということは、すなわち大量のポイントを手にする人は大量の消費をする人ということだ。さらに、決済事業者が発行するポイントは、いわば外国のコインと同じで、基本的によその国では使えないか目減りするかとなる。ポイントも、同じ決済サービスが使えるところに誘導し、消費してもらうための販促ツールといっていい。だから、余計なお金をなるべく使わない節約派の人は、ポイント長者にはなれないわけだ。
加えて、ポイントには有効期限がある。我々は、いったん手にしたものを失うことに耐え難い苦痛に感じる。損をすることが何より嫌いなのが人間の心理なのだ。それを逆手に取っているのが、「期間固定ポイント」「用途限定ポイント」などで、短いものならその期間は1カ月程度。せっかく手にしたポイントが失効するのはもったいないと、つい余計なものを無理に買ってしまう。
マイナポイントで付与される各ポイントにも期限があるので、受け取った人の大半は全部使い切ろうとするだろう。しかも、ポイントには“おまけ感”があるため、なくてはいけない必需品より、せっかくだから買っておくか程度のものを気軽に使ってしまいがちだ。コロナでも懐は痛んでないし、どんどんお金を使いたい人には、ぜひ景気浮揚に貢献してほしいが、家計をしっかり引き締めたい人なら、最初の2万円と受け取った5000円分のポイントの使い道を熟慮してから動くべきだろう。