実は現行の検査体制では、PCR検査を行っている病院・診療所、地域外来・検査センターは、地域の保健所と委託契約を結ぶことが求められる。つまり、PCR検査とはあくまで「行政検査」であって、医療機関はそれを代行しているという建て付けなのだ。

「委託契約」で生じる医療の綻びを
保健所が食い止められないワケ

 では、なぜこういう多重請負構造になっているのかというと、やはり新型コロナが「第二類相当の指定感染症」だからだ。結核やSARSなども含まれる第二類感染症は、感染症法に基づいて都道府県知事が定めた指定医療機関への入院、場合によっては隔離措置が取られる。そのため保健所としては、感染者の情報を自分たちでしっかりと管理したい。だから自分たちと委託契約を結んだ医療機関にしか、検査をさせないようにしてきた。

 しかし、日医はその「委託契約」が不要だと述べている。それはつまり、保健所がボトルネックとなって、PCR検査を増やすことができないと言っているのと等しい。

 コロナ対策で必死に頑張ってくれている地域の保健所を邪魔者扱いしているようなもの言いに、不愉快になる方もいるかもしれないが、これは保健所の職員がサボっているからとか、仕事ができないからという話ではない。もはや保健所はマンパワー的に限界だからだ。

 4月にNHKが『誰かが倒れたら、もう終わり』(2020年4月2日)という保健所職員たちの悲痛な叫びを報じたが、そのブラックぶりはまったく改善されていない。7月22日の新型コロナウイルス感染症対策分科会でも、「一部保健所で対応逼迫」と指摘されている。

「だったら、委託契約する医療機関を増やせばいいのでは」と思うかもしれないが、この厳しい状況は、そういう話で解決できるものではない。それは、ブラック企業を思い浮かべていただければわかりやすいだろう。

 あるところに、社員がバタバタと倒れるハードなブラック企業がありました。あまり社員から文句が出るので、社長は「だったら下請けを使え!これならお前らの負担も減るから、今よりたくさん仕事ができるだろ」と言って、社員の仕事をどんどん下請けに丸投げするようにしました――。