たとえば北海道網走では、この期間の最高気温はおおむね18℃~29℃で推移しているのだが、8月11日だけは36.5℃となっている。高温への備えも慣れもない地域が、その日だけいきなり高温に襲われているのだ。正直なところ、「個人では備えようがない」と感じる。少なくとも、おおむね「冷涼」または「寒冷」といえる地域で暮らす低年金高齢者や生活保護で暮らす高齢者に対して、「1年に数回はあるかもしれない酷暑の日のために、あなたの住まいにエアコンの設置を」と働きかけることに、現実味があるとは思えない。

 それに加えて、よりによって今年はコロナ禍が重なり、夏が来る前に医療機関や介護事業者の余力が失われている。ホテルを避暑の場として活用することも考えられるが、コロナ禍によって宿泊施設の倒産が増加すれば、その選択肢も消滅するだろう。

酷暑がもたらした
「公費でエアコン」という可能性

 酷暑だった2018年7月、生活保護で暮らす札幌市の女性が自室で熱中症のため死亡した。部屋には冷房装置があったのだが、女性は料金滞納により電力供給を止められていた。しかし、この悲劇の年に「低所得なら公費でエアコン」という可能性が開かれた。

 もともと、この年は夏の酷暑が予想されていた。厚労省は6月に課長通知を発し、一定の条件を満たす場合、エアコン設置費用(上限5万円)を支給することとした(生活保護問題対策会議による解説)。この「一定の条件」の範囲は非常に狭いのだが、該当しない場合でも、社協の貸付を利用してエアコンを取り付けることが可能である。

 福祉事務所のケースワーカーたちには、「エアコンを設置できる」という情報が周知されにくかったため、厚労省は8月2日に事務連絡を発して周知の徹底を要請した。しかし結局のところ、実質的に利用できない制度は、タテマエを繕うための飾り物のようなものだ。

 翌年の2019年になっても、「エアコンを設置するために、社協の貸付の利用を拒む担当者との粘り強い交渉が必要だった」という事例が散見された。当事者の熱意や気力、専門知識と権限を持つ支援者の手助けなどがなければ、実質的に「諦めるしかない」ということになる。