コロンビア大学(アメリカ、ニューヨーク)のヤーコフ・スターンが命名した「コグニティブ・リザーブ」(2002年の報告より)、つまり「認知的予備力」を高めておけば、認知症になるのを遅らせることができるという研究報告が増えてきています。正確にいうと、認知症の症状が現れるのを遅らせることができるのです。
ニューロイメージング研究所(イタリア、ローマ)のラウラ・セーラらが2015年に軽度の認知症患者を対象として行なった研究によると、数ヵ月にわたって身体と脳を使う活動を多く行なったグループでは、認知症が進行した患者はほんのわずかしかいなかったそうです。
この患者たちは、散歩や編み物、楽器の演奏、新しい言語の学習、旅行、読書、他者との交流を積極的に行なっていました。ただ、この患者たちの脳の白質における病変の程度は、非活動的なグループと変わりませんでした。
要するに、脳の白質に病変があっても、脳を活性化して「コグニティブ・リザーブ」を高めておけばそれだけ、その病変が症状として現れにくくなるということです。
ライフキネティックのトレーニングは、記憶トレーニングと運動トレーニングが組み合わされており、さらに記憶以外の認知機能と知覚を鍛える要素も含んでいます。
ですから、まさにこの「コグニティブ・リザーブ」を高めて、脳の老化のプロセスを阻止することができるといえるでしょう。
さらに、ライフキネティックのトレーニングには、ほかのトレーニングとは一線を画す「楽しめる」という特別な要素も含まれています!
トレーニング後に、高齢の参加者の多くが「これほど笑ったのはすごく久しぶりだ」と言ってくれます!
「楽しい」という気持ちは、生きる喜びにつながります。歳を重ねるごとに「楽しい」という気持ちを感じることが少なくなっていきますが、ライフキネティックによってそのような生活を変えることができるのです!
私がボルシア・ドルトムントのクロップ監督と初めて話をしたときには、まだライフキネティックに関する科学的なデータがありませんでした。それをクロップ監督に伝えたところ、クロップ監督はこう言ったのです。
「私にはそのようなデータは必要ない! このトレーニングのコンセプトとエクササイズを知れば、このトレーニングにはデメリットがまったくなく、メリットしかないことがよく理解できる。どれほどの効果があるのかは、始めてみなければわからないが、すでに確かであることは、このトレーニングはとても楽しめるものであるということだ。それだけでも行なう価値はある!」と。