ミッション、ビジョンは「進化」する

秀逸なミッション・ビジョンは、<br />企業や時代を越えて<br />長く継承されていく田所雅之(たどころ・まさゆき)
株式会社ユニコーンファーム 代表取締役社長
1978年生まれ。大学を卒業後、外資系のコンサルティングファームに入社し、経営戦略コンサルティングなどに従事。独立後は、日本で企業向け研修会社と経営コンサルティング会社、エドテック(教育技術)のスタートアップの3社、米国でECプラットフォームのスタートアップを起業し、シリコンバレーで活動する。日本に帰国後、米国シリコンバレーのベンチャーキャピタルのベンチャーパートナーを務めた。日本とシリコンバレーのスタートアップ数社の戦略アドバイザーやボードメンバーを務めながら、ウェブマーケティング会社ベーシックのCSOも務める。2017年、スタートアップの支援会社ユニコーンファームを設立、代表取締役社長に就任。著書に『起業の科学』(日経BP)、『御社の新規 事業はなぜ失敗するのか?』(光文社新書)、『起業大全』(ダイヤモンド社)がある。

 ミッションは環境の変化に基づき進化する。フェイスブックのミッションは「making the world more open and connected(世界をよりオープンにし、つなげる)」だったが、2017年に、「give people the power to build community and bring the world closer together(人々にコミュニティ構築の力を提供し、世界のつながりを密にする)」に変更した。

 フェイスブック創業者のマーク・ザッカーバーグによると、人々につながるための手段(フェイスブック)を提供すれば世界は自然と良くなっていくと考えていたが、「社会はいまだに分断されていると感じた」ことが発端となっている。

 フェイスブックの月間アクティブ利用者数は20億人を超えた。つながりの“広さ”は世界規模になったが、一方で「グローバルで分断化」が進んでいると言われている。その状況を鑑みて「つながりの“深さ”」に軸足をシフトしたという。

 日本でも、グローバルでも、かつてコミュニティとしての役割を担っていたものの存在が薄くなっている傾向があり、それをテクノロジーを使ってオンラインなつながりで補完できる存在になるという覚悟が垣間見られる。その言葉通り、フェイスブックは2018年からコミュニティ機能を強化した(投稿予約、リクエストフィルター、グループルールの作成など)。

 今はVUCA(ブーカ)の時代と言われている。Volatility(変動性)、Uncer-tainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の略だが、あらゆるものが複雑になり、変化のスピードが上がり、その振れ幅も大きくなっている。

 そういった状況において、起業家は常に、アンテナを研ぎ澄まし、時代の変化や時代が求めるものを察知しなければならばならない。マーク・ザッカーバーグが行ったように、ときにMVVを進化させていく必要があるのだ。