頭のいい理系は、こう読んでいる
その先輩は私と同じ化学の担当で、複数の予備校を掛け持ちしている超人気講師でした。教え方がうまいだけでなく知識も豊富で、尊敬できる方です。
ある日、予備校の講師室で授業が始まるのを待っていたときのことです。その先生が書店の紙袋を机の上にドサッと置きました。中には6、7冊の本が入っています。
「そんなにたくさんの本、いつ読むんですか? 先生お忙しいですよね?」
「今日中に1冊読んで、土日に3、4冊。他はスキマ時間に読んじゃうかな」
ほぼ1週間で読み終えてしまうとのことです。私は驚いてまた聞きました。
「どうやったら、そんなに速く読めるんですか?」
「全部の本を最初から最後まで読むわけじゃないよ。必要なところだけ読めばいいんだよ」
その返答に、私は大きな衝撃を受けました。
ただ思い返してみると、私も学生時代、専門書や学術論文を先生と同じような読み方をしていました。当時は図書館の本を読むだけだったので、もったいないなどとは思わず、必要な箇所だけを拾って読むだけでした。
ところが社会人になって自腹で本を買うようになると、途端に「もったいない」という意識が生まれ、全部読まなければ気が済まないようになっていたのです。
しかし、全部読んでも、その情報を使えていないのでは意味がありません。一部分しか読まなくても、その情報を自分に生かしている先生のほうが、よほど正しい読み方をしているのではないか。そう考えたのです。
「買った本を必ずしも全部読まなくてもいいんだ!」、そう確信した瞬間でした。
「読書は自分の問題解決のためにするもの。1冊丸ごと読むことが目的ではない。全部読むよりも、本の内容をいかに実践するかが大事」、そう考えるようになったのです。
全部読まないことで読書にかける時間を短縮できる。急いでページをめくらなくても、短時間で読了できるのです。