「ほめ上手」の親がしている3大習慣Photo: Adobe Stock

新型コロナウィルスの影響で、世の中が大きく変わりつつある。そんな変化の激しい現代において「子どもに何をしてあげられるか」と悩んでいる親は多いのではないだろうか。
そこで、これまで教育を軸に取材を重ねてきた著者が、教育学、心理学、脳科学等、さまざまな切り口の資料や取材を元に「いま、最も子どものためになる」ことを『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』(加藤紀子著)にまとめた。
「家での勉強のしかた」から「遊び」「習い事」「運動」「食事」まで、子育てのあらゆるテーマをカバー。100の「してあげたいこと」を実践するにあたっては、さらに詳細な「421の具体策」で、実際に何をどうしてあげればいいのかまで丁寧に落とし込んでいる。
発売早々、高濱正伸氏(花まる学習会代表)が「画期的な1冊が誕生した。長年の取材で得た情報を、親としての『これは使えるな』という実感でふるいにかけ、学術研究の裏付けやデータなども確認した上でまとめあげた力作である」と評するなど話題騒然の1冊だ。本稿では、特別に本書から一部を抜粋・編集して紹介する。

「ほめ方」しだいで効果が変わる

 人はほめられると脳の神経が刺激され、ドーパミンが放出されることで強い幸福感に包まれます。

 また、1960年代、ハーバード大学の教育心理学者、ロバート・ローゼンタール教授は、教師が「君ならやればできるよ」と言うと実際に学習者の成績が伸びることを実験で明らかにし、これを「ピグマリオン効果」と名づけました。

 一方で、慶應義塾大学の教育経済学者、中室牧子教授は、アメリカの大学で近年行なわれたいくつかの研究結果をもとに、「むやみに子どもをほめると、実力の伴わないナルシストを育てることになりかねない」といっています(『「学力」の経済学』ディスカヴァー・トゥエンティワン)

 ただし、ほめることに効果がないわけではなく、大事なのはその「ほめ方」だといいます。効果的に子どもをほめるにはどうすればよいでしょうか?

【その1】すぐにほめる

 行動主義心理学の学習へのアプローチで「即時確認の原理」という考え方があります。ほめるにしても注意するにしても「即時」が大事だということです。やったことがすぐに認められるとうれしいのは、意識がいま、そこにあるからです。

【その2】能力より、努力をほめる

 コロンビア大学の心理学者、クラウディア・ミューラー教授とキャロル・ドゥエック教授は、「ほめ方」に関して、小学5年生400人を対象に実験を行いました。

 それによると、テストの結果がよかったときに「あなたは頭がいいのね」と言われたグループはその後の成績が下がり、「あなたはよくがんばったわね」と言われたグループは成績を伸ばす傾向がありました。

 また、「努力」より「能力」をほめられた子は、難題に直面したときにすぐにあきらめる傾向があり、成績へのプレッシャーから自分の成績に関してウソをつく傾向も高いことがわかりました。

 一方、努力をほめられた子は、悪い成績をとっても自分の能力のせいではなく「努力が足りないからだ」と思い、難題に挑戦し続けるということもわかりました。

【その3】過去と現在をくらべる

 東大合格者数日本一の開成中学・高校の柳沢幸雄前校長は、「子どもの成長を過去と現在で比較すれば、いくらでもほめるポイントが見つかる」といい、これを「垂直比較」と呼んでいます。自己肯定感を高めるためにも、その子自身の成長を垂直比較することが大切だといっています。

(本原稿は、『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』の内容を抜粋・編集したものです)

参考文献

中室牧子『「学力」の経済学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
「【近憂遠慮】世界一の18歳に新たな航路を──開成学園校長 柳沢幸雄氏」(BUAISO.net, 2012/8/1)