過去と同じことをやっても先はない。変わらねばならない。しかし、どう変わればよいかはまだ誰もイメージできないし、何かをする十分な投資資金もない。しかたなく、新しいと “思しき方向”に向けて、“ちょっとだけ”新しい事業や活動をやってみる。大きな事業としてGOサインを出せるほどの確信も裏付けもないので、本腰は入れられない。

 投資家向けには格好よく「新しい変革に取り組んでいます!」と言ってはいるものの、幹部を含めた社員全員が「会社が本気で変革できるわけがない」と思っているような状況である(一部の人だけは必死に旗を振っているが、社員はその内容を信用していない)。

 ゆえに、すべてが試行錯誤であり、何をやっても中途半端に見える。しかし、一方では何かをやらなければと言いながら、結局指一本動かさなかった過去とは違い、それなりに手を打ちはじめたともいえる。

DX、SDGs、ジョブ型雇用……
大企業に横行する「なんちゃって病」

 近頃さまざまな企業で散見されている以下のような事象は、「なんちゃって病」の“具体的症例”といえるのではないだろうか。

なんちゃってDX(デジタルトランスフォーメーション)

 これからはデータドリブンの時代がやってくる!と表向きは言っているが、実際にはこれまでのハード中心のビジネスの何をどう変えてよいかわからない。そのような企業が複数集まって共同プロジェクトを進めたりしている。アイデアレベルではさまざまな取り組みが始まっているし、少しずつリアルな実証実験も進んでいる。しかし、実装というレベルではまだまだこれからで、ほとんど何もない状況にある。実施できたものとしては、「テレワークを始めました」くらいが関の山である。

なんちゃってSDGs

 地球がサステナブルであるために、少ない資源を有効に使う生産方法に変えていく必要がある。近頃は「ESG投資」という言葉も毎日のように記事で見かけるようになり、金融機関や機関投資家も、こうしたテーマに配慮していない企業への出資を制限してくることは必至で、継続的に事業資金を調達するためにもSDGsを意識した経営に変わらなくてはならない。そのために、SDGsバッジもとりあえず社員に着けさせているし、発展途上国で木を植える運動にお金も出している。太陽光発電のパネルも一部の施設で設置している……。

 したがって、少しは関連した取り組みに手を出してみてはいるが、本業そのものにインパクトがある変革まで到達しそうな気配はない。