文章が読めると、あらゆる教科で有利になる

――学校に行かなくても、学力をつけるために必要なことは何だと思いますか?

借金玉 具体的に大切なことは、2つあります。

 ひとつは家に、学習用の机とイスを置くこと。

 僕はかつて補習塾の講師をしていたことがあります。いわゆる、学校の学習についていけない子どもたちをメインの顧客とした学習塾です。そこで気づいたことは、学校の学習についていくことに苦戦している子どもたちの多くは、「学習のための机とイス」を持っていないという事実でした。

 彼らは、ご飯を食べるためのちゃぶ台(こたつ)しかない家に住んでいた。専用の場所がないために、学習習慣がいつまでたっても身につかないのです。

 2つめは、本を読むことです。読書を積み重ねると「文章を読む力」がつきます。これは、いわゆる教科ごとの学習「以前」のあらゆる勉強の基盤となります。「読み書きそろばん」というやつですね。

 具体的な成果としては、参考書や問題文を読むのが速く、正確になる。結果、2倍、3倍とテストの点に跳ね返ってきます。

 それから、文章をちゃんと読めると、物事の流れや因果関係がつかめます。たとえば歴史を一問一答の語呂合わせで丸暗記するのには時間的にも限界がありますが、流れがわかっていれば、どこが試験に出ても対応できます。

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 僕は小さい頃からジャンルを問わずありとあらゆる本を読んでいました。学校の休み時間、友達が一人もいなくて机に突っ伏して寝てるの、辛いじゃないですか。そういうときも、本を読んでいれば誰も話しかけてこないし、不自然じゃない。

 最初は学校でも家でも居場所がなくて現実逃避で始めたことが、後から僕を助けてくれた。本当に幸運でした。辛い現実から逃げる力に後押しされていなければ、僕は「本を読む力」を身につけられなかったと思います。

発達障害の人には、都会のマンモス大学がおすすめ

――1度合格した大学が合わなくてやめて、2回目の受験で早稲田大学に合格したんですよね。キャンパスライフはいかがでしたか?

借金玉 何の苦労もなかったです。授業はすべて自分で選べましたし、教授にどれだけ逆らっても、それが当たり前のような文化の大学ですから。それと今は数が減っちゃったんですけど、大学校内にあった喫煙所がすごく楽しかったんですよ。喫煙所って、大学の人間関係からはみ出した人が集まる場所なので。

 たとえば、26歳になるまでフラフラしてたら家業を継ぐことになって、親から「せめて早稲田ぐらい出てこい」と言われた人とか、暴走族にいたけど飽きたから早稲田に入ってきた人とか。8年ぐらい大学にいる先輩もいましたね。仏像を背負っている人がいたときは、「なんで仏像を背負ってるんですか?」って聞いたら、「今考えごとをしているから」と言われて、「なるほど」と妙に納得したり(笑)。

 変わり者は自分だけじゃないことがよくわかって、めちゃくちゃ面白かったです。僕みたいに、他と協調したり縛り付けられるのが苦手な発達障害者は、できるだけ均一化していない自由度の高い環境(例えば都会のマンモス大学)を選ぶことを何より重視したほうがいいと思います。

 おかげで僕は「不登校生活が長かったにもかかわらず早稲田大学を卒業できたこと」が、社会へ出て行く上で大きな自信につながりました。その自信も結局打ち砕かれることにはなりましたが、それでもないよりはずっといいですね。

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