何歳までこの会社で働くのか? 退職金はどうもらうのか? 定年後も会社員として働くか、独立して働くか? 年金を何歳から受け取るか? 住まいはどうするのか? 定年が見えてくるに従い、自分で決断しないといけないことが増えてきます。
会社も役所も通り一遍のことは教えてくれても、”あなた自身”がどう決断すれば一番トクになるのかまでは、教えてくれません。税や社会保険制度の仕組みは、知らない人が損をするようにできています。
定年前後に気を付けるべき「落とし穴」や、知っているとトクする裏ワザを紹介したシニアマネーコンサルタント・税理士の板倉京先生の話題の著書「知らないと大損する!定年前後のお金の正解」から、一部を抜粋して紹介します。本書の裏ワザを実行するのとしないのとでは、総額1000万円以上も「手取り」が変わってくることも!
65歳で会社を退職したAさんは、悔やんでいます。Aさんが会社を定年退職したのは、3月31日。Aさんの誕生日は4月1日です。退職日の翌日に65歳になりました。その後も働き続けたいと思いハローワークに行くと「65歳以上で退職した人は、『失業手当』ではなく『高年齢求職者給付金』の支給になります」と言われました。よく聞くと定年退職の場合「失業手当」は最大で150日給付されますが、「高年齢求職者給付金」は、最大50日。給付日数が3倍も違うというのです。
どのくらい違うのか計算してもらうと、退職前の月額給与30万円で、20年以上働いていたAさんは、65歳になる前に辞めていれば「失業手当」が74万円ほどもらえたはずなのに、「高年齢求職者給付金」になると約30万円とのこと。
「でも、私は誕生日の前日に退職しているから、64歳で退職しているのですが」と言うと「法律上では、誕生日の前日から65歳になっているんです」との回答。
そうなんです。失業保険の年齢は、実際の誕生日の前の日に上がることになっているのです。かわいそうなAさん。あと1日だけ退職日を早めてもらえれば、44万円も多く手当を受けることができたのです。
65歳の誕生日の前々日に退職、誕生日以降にハローワークに行くのがベスト!
失業手当をより多くもらうためには、65歳になる前に退職するほうがいいのですが、気を付けなければいけないのが、64歳までもらえる「特別支給の老齢厚生年金」をもらっている人と年金を65歳になる前にもらい始める「繰り上げ受給」をしている人です(ここでは以下両方を合わせて「老齢年金」といいます)。
ここは重要ポイントですが、64歳までは「老齢年金」と「失業手当」はどちらかしかもらえません。そのため、64歳のうちに失業手当の手続きをすると、「老齢年金」はストップしてしまいます。ストップした分は、あとからはもらうことができないので年金がストップする期間はなるべく短く、できればなくしたいところです。
そのためには、「65歳になる直前(誕生日の前々日がベスト)に退職」をして、失業手当をもらえるようにしておき、「65歳になってからハローワークに手続きに行く」のがベストな方法です。これなら64歳のうちにもらえる予定の「老齢年金」も期限いっぱいもらえるため、失業手当と年金を両方もらうことができます。
ただし、退職日をずらしてもらうことで、退職金や給与が下がってしまったり、自己都合での退職扱いにされて、給付制限などがついてしまっては、本末転倒です。会社との調整はしっかりしていただきたいと思います。
65歳を超えて何度も「高年齢求職者給付金」を受けるツワモノも!
余談ですが、2017年の制度改正により65歳以上でも雇用保険に加入できるようになりました。それまでは、65歳以降の退職では「高年齢求職者給付金」が一度支給されて、それ以降は再就職先を辞めても給付金はもらえなかったのですが、この制度改正のおかげで、条件を満たせば何度でも「高年齢求職者給付金」を受け取ることができるようになったのです。
受給するための条件は、退職日以前1年間で合計6ヵ月以上雇用保険に加入していることです。実際この制度を使って、何度も求職者給付を受けているツワモノもいるようです。
中小企業などでは、制度改正を知らずに65歳以上の人の雇用保険の加入手続きをしていない、というところもあるようです。そんなときは、雇用保険に加入してもらうように会社にお願いしましょう。雇用保険は、過去2年分までさかのぼって加入することもできます。